東京駅にて
日本も変わってきています。先日のことですが、お友達が飲み助なものですから、東京駅の中にある飲み屋さんに行きました。注文を取りにきてくれたり、料理やお酒を運んできてくれた子は、バングラディシュ出身の若い男女でした。日本語が非常にお上手でした。
少し会話をしてみました。「学生さんですか?」「はい」「今どこに行っているのですか?」「◯◯大学です」。通っている大学が日本の有名大学なのでびっくりしました。「何を勉強しているの?」「経営学を学んでいます」とのことでした。
経営の勉強をしながら、接客という実体験をしているのです。バングラディシュと日本では10倍以上の賃金格差があるのでしょうが、単にお金のためではなくて、何でも貪欲に学び取ろうとする姿勢に感心しました。「こういう子がこれからの将来を作るんだな」と思います。
労働者たちの宿命
同時に、アメリカでこの10年ほどの間に起きていたことが、今、日本で起きているのだと感じました。この流れは完全に日本に来ておりますが、この状況が長く続くかどうかは分かりません。働きに来る人は、その社会が魅力的だから来るのです。この点、日本はどうでしょう。賃金はどうでしょうか。また職場の環境は良いのでしょうか。
日本では盛んに「人手が足りない」と言って、どんどんと外国人を入れていますが、日本経済がドチャっと壊れてしまった時に最初にクビになるのは「おいでおいで」と言って連れて来た外国人です。1990年代の頃を思い出してください。バブルで盛り上がっていた日本へと、ブラジルから多くの日系人たちが「デカセギ」として日本にやってきました。しかしどうでしょう。バブルがはじけ、最初にクビになったのは彼らです。これからまた同じことが起こりますよ。
お母さんの力
日本で今起きていることは、労働力が足りないということではございません。労働力はたくさんあります。しかし、職を求めている人たちに対して、十分な数の就業機会が与えられていないのです。仕事がしたくてうずうずしている人たちはたくさんいらっしゃいますよ。まずはお母さんたちです。
日本では子どもが出来たら職場を離れますが、これは何と無駄な人材の使い方でしょうか。会社の中に保育所を作ってはどうでしょう。
アメリカの優良企業では、質の高い保育所を設置しておりますので、子供のいるお母さんたちもバリバリ働いて、稼いでおります。質の高い保育所を保つためには、きちんとトレーニングを受けたプロの保育士さんも必要です。彼ら、彼女たちにはお金もしっかりと払います。ですから、良い保育士になるというのも素晴らしい将来像として成り立つのです。日本で保育士は、その仕事の重要性に比して、給料が異常に低い。これは大問題です。このことに気づくことが出来ないのは政治の貧困であり、企業の怠慢です。
西鋭夫のフーヴァーレポート
胃袋戦争(2020年1月上旬号)-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。