地に堕ちた米マスコミ界
アメリカはマスコミにおける報道の自由を、さらには言論の自由をとても大切にする国でした。しかし、この10年間でそれが大きく変わってきたように思います。マスコミが言論の自由を逆さまに捉えて、「言論の中立性」や「報道の中立性」をゴミ箱に捨ててしまったような気がするのです。代わりに、特定のイデオロギーだけを主張し始めました。ある候補者の応援団のような、そんな集団へと成り下がってしまいました。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私の長いアメリカ生活の中で、こんなことは初めてです。マスコミが中立性を失うこと、これは大問題です。国が崩壊するほど大問題です。
メディアだけではありません。先にお話ししましたが、言論の自由を壊そうとしているのは、暴力を使って言論を封殺しようとする学生集団です。その中には学生でない人たちも大勢入っております。いわゆる職業的なアジテーター、すなわち「扇動者」というやつです。外からやってきて、学生をそそのかし、攻撃を率いている人たちがいます。
規制ではなく、反論を
法によってこの状況を規制したらどうか、と考える人もいるかもしれませんが、そうとも言えません。フーヴァー研究所のエプステイン教授による「言論の自由の見直しは不要だ」という論考を参考にしましょう。教授は「反論こそが適切な処方箋であり、法律の力を使って言論を抑制すべきではない」という立場を取っております。
私も同感です。新しい法律を作るなど、必要ありません。今までにもありませんでしたし、アメリカ200年の歴史において、言論の自由は順調に機能しておりました。政府がここでしゃしゃり出てきて、あれこれ言い始めるのも良くありません。
エプステイン教授は政府が「人々が公共の場で発言しはじめた瞬間から表に出てはいけない」と主張しております。政府が言論に口を出すことは、言論統制に行き着くからです。討論という「戦場」に口を出すな、ということです。口を出したら終わりですよ。私たちの近隣諸国のような状況になります。
自由なき日本
ところで、日本の大学の中には言論の自由という発想自体がほとんどないように感じます。自由などあるわけない、と考えた方が良いかもしれません。日本の大学は、私の経験と観察からすると99%が左寄りです。おそらくこんなことは日本の大学だけでしょう。隠れマルクス主義の先生が大勢おられます。
そんな中で西のような、いわゆる日本の真ん中を歩く男は「あいつは右翼だ、極右だ」と言われているわけです。「西が極右だったらおまえは極左か」と思いますよね。
私は言論の自由のもと発言しているだけです。それだけで「あいつは要注意だ」となります。少数者の意見だからでしょうか。日本の大学は、本当に居辛くなりました。久しぶりに米国から帰ってきたとき、「うわ、嫌な所に来たなぁ」と思いました。
西鋭夫のフーヴァーレポート
言論の自由(2019年6月下旬号)-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。