宇宙軍構想
2019年になりまして、スペース・フォース(Space Force)、すなわち宇宙軍設立の動きが現実味を帯びてきています。アメリカには現在、陸軍、海軍、空軍、海兵隊、そして海上警備を主とする沿岸警備隊の軍・部隊が存在しますが、宇宙軍の創設となれば、アメリカでは6つ目となります。宇宙軍にはおそらくAIやITの技術者、専門家が多く入るものと思います。10年もすれば人間の出番はほとんどないかもしれません。
宇宙軍の目的は宇宙の治安を守ることと表立っては言うのでしょうが、実際のところは米国を守ることが第一の目的でしょう。そのために、高度な衛星を何個も打ち上げ、宇宙を徹底的にコントロールするのではないかと思います。それは「アメリカを攻撃したら、俺たちは宇宙からお前の衛星を潰すからな」という世界です。北朝鮮なんぞ、ミサイル開発を行っておりますが、宇宙軍を作る力などないでしょうから、ビクビクしているでしょう。すでに、宇宙から丸見えになっているものと思います。
米中対立
AIや宇宙開発の分野でも米中は激しく対立しています。中国の技術や開発力は実際には米国のそれにほとんど追いつけない状況でしょう。それほど米国が一人勝ちの状況です。しかしながら米国は、中国産技術の安価さ、そしてまた中国によるスパイ行為に警戒しております。
その点で新たな動きがありましたね。メイド・イン・チャイナ(Made in China)、つまり中国産ハイテク機器などの利用を米国は制限しました。中国産ドローンは使用禁止です。中国発の有名なSNSもありますが、その利用についても大きく制限しました。
中国産の製品やSNSなどは全て警戒の対象となっています。やりすぎではないかと思うほどですが、米国に住んでいますとこの重要性が肌感覚でわかります。たとえば最近の流行りで、家で機材に話しかけると答えてくれたり、音楽をかけてくれたりする機械がありますね。あの機会は、皆さんの声を単に聞いているだけではありません。皆さんの声は全て記録されているのです。
監視社会の到来
言い方を変えますと、皆さんの生活は全て丸見えで、監視されております。これまでの全てが記録されています。何時にどんな声をかけているか、行動パターンもおそらく記録され、割り出されているでしょう。
消せば良いのではないか、と思うかもしれません。すなわち、デリート(Delete)ですね。しかしそのデータは基本的には一生消えないと思った方が良い。「消える」のは表面的なもので、その背後にある私たちよりも賢いコンピューターが、すでに皆さんの記録を集積し、どこかに転送しております。
それらは情報として色々と整理され、必要がないとコンピューターに判断されて、初めてその情報は破棄されていくのです。情報の取捨選択は世界中の膨大なデータを吸収したAIが行っております。この監視社会の最大の柱が宇宙技術であり、AIです。アメリカ宇宙軍の最大の狙いは、宇宙技術とAIを用いて宇宙を支配すること、すなわち、私たちの地球上での動き全てを管理下に置くことだと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
AI戦争と監視社会(2019年4月下旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。