日本国籍
「アメリカ人にならないと、CIAに入ることは出来ませんよ」と言われた時、私は「その他大勢と同じように、あなたもアメリカ市民になりたいのだろう」と暗に言われているような気がしました。
私はCIAからの誘いにノーと答えました。日本国籍を捨てることなどできないのです。そして、こんなことも言いました。今、私がCIAに入りたいと言って、仮に日本国籍をポイと捨てて、アメリカ人になったとしたら、どう思うのですか。そんな軽々しい男は信用できないでしょう。次は中国人、その次はロシア人となって、アメリカを裏切っていく可能性がありますよ、と。
すなわち、国籍をポイっと変えることが出来る人を雇ってはいけません、とお話したのです。リクルーターからすると、反論が返ってくるとは夢にも思っていなかったのでしょう。逆に「そんな奴が欲しかった」と、好意を持たれてしまいました。その後2年間ほど、CIAにストーカーされることとなります。
愛国の士
その間、「トシオ、考えは変わったか?」と何度聞かれたか。私はその度に「ノー」と答えました。
私の両親は日本人です。そしてガチガチの、そして愚直なほど日本を愛する両親でした。そんな両親から生まれた私です。私は日本文化、日本の教育、日本の恩恵を受けて育ち、34歳になってアメリカに来ました。そのアメリカで博士号を取り、その1週間後に「国籍を替えてCIAに入れ」と言われました。
私はおそらく細胞の芯まで日本に染まっています。皆さんご存知でしょうか。白いチョークを赤い水に浸して取りだしたら赤くなります。これを水でザーッと洗うと表面はまた白くなります。しかし、ポキッと折ると中は赤いのです。私はその状態なのだと思います。おそらく日本人のほとんどはそんな感じでしょう。すなわち、他の文化に染まっているように見えても、中身は日本人なのです。
アメリカの強さ
アメリカにいるといたるところに「星条旗」が掲げられています。アメリカ人のアメリカに対する忠誠心には、並々ならぬものがあります。その一方で、現在の日本では国旗や国歌、つまり「日の丸」と「君が代」に対する嫌悪感を持つ人がなんと多いことか。
アメリカ人の国旗・国歌に対する忠誠心は、一体どこから湧き上がってくるのか。答えの1つは、アメリカの寛大さでしょう。例えば移民政策です。今はそうではありませんが、建国の頃は誰でも分け隔てなく入国することが可能でした。
アメリカにやってきて、最初に感じるのは自由です。空気が広いのです。言ってはいけないことが非常に少ないのです。逆に、ものを言わない方がおつむが悪い、と言われます。能ある鷹が爪を隠しているとダメです。アメリカでは隠さないのです。そんなアメリカに誰もが魅了されてしまうのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年4月上旬号「愛国心と教育」-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。