オゾン層破壊の真犯人
スタンフォードのおじいちゃん、おばあちゃん先生たちとの会話の中でびっくりしたことがもう一つあります。それは地球上で一番、酸素を作っている場所が海であるということです。私は「面白いですね。そうするとCO2はあまり関係ない、ということですか?」と聞いたら、「あまりない。ないどころか、あんなもの放っておけ」と言っておりました。
先生方によれば、私たちがむしろ注意すべきは「地中に眠る怪物」のようです。それはメタンガスのことでした。メタンガスがオゾン層を破るのです。
これは日本の将来にとって極めて重要なことだと思います。日本の周辺海域にはたくさんのメタン・ハイドレート、すなわち圧縮されて冷たい状態のメタンがあることがわかっています。これが将来における大いなるエネルギー源になると見込まれております。しかしそれを本当に掘り出して、使い始めたら、大変なことになるかもしれません。オゾン層破壊の元凶として日本のメタン・ハイドレート採掘が批判を浴びるかもしれないのです。
パリ協定
CO2の削減に注力するパリ協定については、「アメリカが離脱しても何も問題ない。なぜならアメリカには優れた環境法があるのだから」と主張しております。そして 「地球は今、二酸化炭素排出量などの問題より、はるかに重大な課題がたくさんあるはずだ。アメリカのみならず、世界各国も、優先順位をしっかり見極めることが必要だ」と指摘しております。説得力のある議論ではないでしょうか。
トランプ大統領は先ごろ、パリ協定からの脱退を表明しましたが、彼は環境のことを全く考えていないわけではないのです。CO2と地球温暖化に関する最新の研究成果を踏まえて話をしているのです。
トランプ大統領はまた、この協定はアメリカの富を略奪するものだと国民に訴えます。アメリカの納税者が経済的な負担を担うだけで、何ももたらさないもの。それがパリ協定だと言うのです。日本ではにわかには信じられない議論だと思いますが、トランプ大統領のこのスタンスは米国民の少なくとも半分から支持されております。
フェイク・ニュース
本当にそうですか、と思われる人もいるでしょう。皆さんがそう考えるなら、その結論に至った情報やリソースを見直してみることが必要です。
私たち日本人は日本にいる限りにおいて、環境問題に関する一つの側面しか見せられておりません。悪者のように扱われるCO2も、植物にとっては大きな栄養でもあるのです。CO2が大量に排出される地域で木々が生い茂っている状況を以前お伝えしたでしょう。CO2は悪者ではないのです。
反トランプ陣営が流すニュースや話題に、日本のメディアが、そして我々自身が振り回されております。そのことに早く気づかなければならない。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月上旬号「原発密約とパリ協定」-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。