From: 岡崎 匡史
研究室より
占領下の日本を統治した最高指揮官は、ダグラス・マッカーサー元帥(Gen. Douglas MacArthur・1880〜1964年)。
彼の役職は連合国軍総司令官(Supreme Commander for the Allied Powers・SCAP)という輝かしいものであった。連合国軍総司令官(SCAP)は、米国太平洋陸軍総司令官と米極東陸軍司令官を兼任する役職で、米国の大統領から任命される。
マッカーサー元帥は、東京丸の内にそびえ立つ「第一生命ビル」に陣取った。
間接統治と官僚システム
連合国軍総司令官(SCAP)の日本管理機関として連合国軍最高司令部(General Headquarters・GHQ)が置かれた。GHQの各局として、民政局、民間情報教育局、民間諜報局、統計資料局、公衆衛生福祉局などが設置される。
当然、日本政府の地位は、GHQの下に置かれる。GHQは「間接統治」をとったので、日本帝国の官僚システムは残存することになった。
GHQからの指令は、「日本政府に対する連合国最高司令官の指令」(SCAP instruction to the Japanese Government・SCAPIN)と呼ばれた。日本政府の役割は、この指令を完全に履行すること。
GHQは日本政府を監視し、ときには援助して民主化政策を後押しした。
口頭指令
GHQの命令は「SCAPIN」によって日本政府に伝えられ、その指令は各省庁を通して法律、命令、規則、是正措置という形で地方行政機関に伝達された。
しかし、実際の占領は生やさしいものではない。時が経つと、GHQの占領政策は巧妙になってゆく。
日本の「自主的民主化」を押し進めていたGHQは、なるべく「口答」によって命令を伝達させた。「口頭」であれば、後からいくらでも言い訳もできるし、忖度までしてくれる。
マッカーサーの正式な覚書による命令になると、その覚書は対日理事会に提出されて、ソ連などの連合国の委員が討議することになるからである。
こうした、隠れた「口答指令」を立証するのは、容易いものではない。占領政策に関与したGHQの将校、そして「口答指令」を受けた日本人関係者の証言など、状況証拠を検証していかなくてはならない。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・竹前栄治『占領戦後史』(岩波書店、2002年)
・チャールズ・A・ウィロビー『GHQ知られざる諜報戦』(山川出版社、2011年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。