盗聴
ITの普及により、国家だけでなく個人や少数のグループでもサイバー攻撃ができるようになりました。テロリストたちも携帯電話やE-mailを使うことがあります。アメリカの国家安全保障局(NSA)は、通信を徹底的に盗聴し、あらゆる情報を集めております。私たちのプライバシーはすでに筒抜け状態です。
情報量は日々相当なものです。それらを分析するだけでもかなりの予算が必要だと思います。それでもなお、テロリストの発見のためには仕方がないということなのでしょう。
私が東京からカリフォルニアで暮らす妻に電話をするときも、10秒から20秒おきに「カチッ」と音が入ります。途切れることはほとんどありません。「あ、盗聴されているのだな」と感じます。
ターゲット
そこで動揺してはいけません。そもそも世界中の電話やメールは全てアメリカのスーパーコンピューターの中に集められている、と考えた方が良い。それで何を分析しているのかというと、私たちが話す「言葉」や「セリフ」です。個々人を対象としているのではありません。
現在、もっとも注力が注がれているのがアラブ人たちが話す内容です。彼らとやりとりするだけで連邦政府は動きます。信じられないような話ですが、スタンフォードでもこのことで裁判沙汰がありました。
フーヴァー研究所のフェローをしている先生の話です。スタンフォードの大学院で教えていた学生がたまたまアラブ出身でして、彼が本国へ帰った後もメールでやり取りをしておりました。そんなある日「スタンフォードの教授とアラブ人がメールでやり取りをしている」として、連邦政府のスパイ局が動いたのです。
ネットワーク社会の危険性
大騒動となり、裁判となりました。もちろん無罪でして、先生は勝ちましたが、米国のインテリたちは「よくそんなことを間違えるな。こいつはアメリカのために一生懸命に研究して、働いているのだぞ」と怒り心頭でした。
連邦政府が調べたのは彼自身だけではなく、彼とやり取りをしている同僚や関係者も含まれます。芋づる式に関係する人の名前を上げていき、一網打尽にチェックしたのだと思います。
自分は何も危ないことをしていないから安全だということにはなりません。友人、知人らが何かの事件や事故に関係していたら、私たち自身も捜査の対象になります。
西鋭夫のフーヴァーレポート
サイバー戦争(2018年3月下旬号)-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。