経験豊富な高齢者たち
現在の日本の人口政策の中に、「前期」高齢者や「後期」高齢者といった言葉が登場します。これは一体何なのでしょう。後期高齢者の後は何になるのでしょうか。また、中期高齢者もいらっしゃるのでしょうか。
日本では65歳で退職させますが、なぜそんなことをさせるのでしょうか。働けない年齢を、勝手に決めている。65歳になると、皆さん人生を一通り体験していますし、仕事もどこを押さえれば良いか完全にわかっています。頭脳も明晰、まだまだバリバリ働ける人もいるし、社会のために何かをしたいと考える人たちが大勢おります。
22歳の新入社員と65歳を比べるのは失礼なほどですが、65歳の社員が持つ能力は、新入社員20人から30人くらいだと思います。
65歳リミットは妥当か
ところが日本は65歳の凄腕サラリーマンを退職させてしまう。この法律を撤廃しないといけない。今、高齢者医療が大変だと大騒ぎしていますが、それは勝手に65歳で辞めさせているからではないでしょうか。働いている人は元気です。元気だと医療費もかからない。
働きたい人は人生の最期まで働く選択肢を与える。弁護士やお医者さん、会計士も退職はしません。給料が80%になっても働きたい人は、働きたいと言うでしょう。
人生経験豊かな高齢者の皆さんだからこそ、活躍できる場もあります。その代表例は子ども園でしょう。現在は、子ども園自体の数も少ないし、保育士さんも少ない。保育士さんがもらえる給料もスズメの涙ほどです。仕事の重要性からして、十分な対価が払われていない。こうした状況下で、待機児童がたくさんいるわけです。
高齢者の経験を生かす
何でもかんでもインターネットに頼る時代にあって、新しい何かを作り出す、新たな将来を描く力はコンピューターにはありません。その力とは、一つには経験に裏打ちされた想像力であり、もう一つは何かを創り出す創造力です。後期高齢者の皆さんの力を大いに引き出して、活用していく。そんな日本は決して暗くないと思う。
日本は年齢についてとやかく言いすぎていると思います。私から見ると、日本は「年寄りはもう使いもんにならない」と考えている国です。しかしこれは大間違い。使い物にならないのは、勉強をしていない若いお兄ちゃんやお姉ちゃんたちです。
退職の年齢を5年ほど上げただけで、医療費は何兆円も浮くでしょう。そんな経済効果もあり得ます。日本は労働力不足だとして、海外からたくさんの労働者を受け入れようとしておりますが、考えて直して欲しい。高齢者の労働力は再評価されるべきです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年6月上旬号「人口爆発」-13
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。