世界的危機
2016年現在、日本の人口は約1億2,600万人です。江戸時代は3,000万人程度でしたが、明治、大正、昭和、平成と日本の人口は上昇してきました。日本の人口は現在がピークと思われます。このまま少子化が続けば、数百年後には日本の人口は急降下するでしょう。
一方、世界の人口は産業革命以降、うなぎ上りでとどまることを知りません。1900年に16億人だった地球の人口は、1950年に25億人、2000年には60億人、2011年には70億人を突破しました。
急激な人口の増加は世界的危機を引き起こします。どこの国でも国民の人口が増えていくのは嬉しい。しかし、それだけの人口を担うだけの食糧や働く場所、住む場所も必要です。歴史を振り返ると、人口が増え続けた国は、自国外にその場所を求めました。例えば、日本帝国やナチスドイツが行ったことはその典型例です。
マルサスの憂鬱
食糧は私たちの生活に欠かせません。経済学者のトマス・マルサスはかつて、人口増加に食糧生産が追いつかず、人類は貧困から抜け出せなくなると予測しました。人口は幾何級数的に、すなわち2、4、8、16のように増加していく。しかし、人間の生活の源となる食糧は算術級数的に、つまり2、4、6、8のようにしか増加しない。
マルサスの予測は当たっていたと言えるでしょう。しかし彼は1800年代の人です。近代以降の生産技術の革新は、食料のさらなる増産を可能にしました。例えば昔、北海道では米を作ることができませんでした。ところが稲の改良でそれが可能になりました。
それと同じようにいろいろな食べ物が改良されていきました。オレンジであれば、実をたくさん付けるとか、ジャガイモやサツマイモだったら、芋がたくさんできるなど、そうした改良です。しかし、それでもなお急激な人口増加には追いつかない。
トマス・マルサス
食糧安全保障
品種改良をいくらおこなっても、未知のウィルスが広まったり、干ばつが起きたりすれば、食糧生産には非常に大きな打撃がもたらされるでしょう。
食物を育てる水も重要です。日本には世界有数の水源があります。何もしなくとも飲める水がある。奇跡のような環境です。この水も汚染されてしまったのなら、食物が育たない国となってしまう。
食糧安全保障は国家安全保障の重大な要素の一つです。これを蔑ろにしてきた政治家の皆さんの罪は大きい。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年6月上旬号「人口爆発」-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。