禊
戦争には必ず勝者と敗者がおります。人それぞれで戦争に対する思いや記憶が異なります。日本はいつまで原爆に苛まれ、謝罪と追悼を繰り返すのか。昨年は戦後70年の年でしたが、2016年に入り71年目を迎えました。
日本はいつ、太平洋戦争の禊ができるのか。昨年総理は「70年目の節目」という言葉を使われてお話しされました。少し変わったところもありましたが、内容はどうってこっちゃない。基本的には昔からの引き継ぎです。
しかし、日本国民への言葉がなかった。なぜ私たち日本国民に向けた言葉がないのか。
日本人へ
あの戦争から70年経ちました。国を愛する日本の皆さま、一億総特攻まで考えていた国民の皆さま。私が国のリーダーとして首相として皆さんに感謝と陳謝をいたします。
例えば、このように一言添えるだけで、戦後日本が終わり、日本の禊ができたわけです。それができる安倍総理になって欲しい。戦争が終わって70年間、日本の首相、誰一人として日本人に対する説明と謝罪がありません。海外にだけ、謝りまくっているわけです。
日本の国民、何百万人が命を落としたのでしょうか。お父さん、お兄さんが死んで、どれだけ多くの母子家庭ができたか。私の周りは母子家庭がいっぱいでした。小学校でも、お父さんが死んでしまった友達の話をたくさん聞きました。子どもながらに、なぜ日本の総理大臣たちは謝らないのだろう、と不思議でした。繰り返しますが、70年間以上、日本の首相は日本国民に頭を下げておりません。
フォード大統領による謝罪
国の代表が謝るっていうことはやはり何らかの障害があるのでしょう。しかし、ほとんど知られていませんが、アメリカでは強制収容所に入れた日系移民に対する公的な謝罪がありました。
時間はかかりましたが、それはフォード大統領によるものでした。国としての謝罪です。あのとき収容所入れられたのは日本からの移民で、アメリカの市民ですよ。12万5,000人です。賠償金は少額でしたが全員に渡しました。日系人もこの謝罪によって、自分たちは悪くなかったことを明確に認識することができました。
日本では、国民への謝罪となると、右翼か左翼かと言った問題がすぐ出てきます。しかしこれは日本の魂の問題です。あれだけ苦しい生活を強いられ、多くが命を落とした戦いに対して、日本人は何も文句を言わない。安倍総理には、そんな日本人へ一言でも言葉をかけて欲しい。そういう総理になって欲しい。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年5月下旬号「オバマ大統領による広島訪問」-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。