反捕鯨大国
オーストラリア人の約90%が捕鯨に反対しております。この国はかつて世界最大の親日国でしたが、捕鯨国としての日本をどう見ているのでしょうか。おそらく、良い気持ちは持っていないでしょう。
オーストラリア観光においては、ホエールウォッチングが人気です。鯨を獲りすぎると、ホエールウォッチングが出来ないのか。これは表面的な理由でしょう。
オーストラリア人の心の奥底には白人優越主義があると思います。この国では昔、原住民であるアボリジニーたちの多くを虐殺したり、隔離したりしました。アボリジニーたちはカンガルーを食べましたが、それも禁止しました。
価値観の押し付け
しかし、簡単にアボリジニーたちの食文化を消し去ることは出来ませんでした。オーストラリアでは今、カンガルー肉に注目が集まっています。白人のオーストラリア人からすると、カンガルー肉に対する意見は割れると思いますが、それでもなおカンガルー肉を専門にする業者も、その肉をとても美味しく提供するレストランもあります。
ここで、私たち日本人が「カンガルーを食べるなんて残酷だ」と言ったらどうでしょう。多くのオーストラリア人は笑うでしょう。自分たちの印象論や価値観を押し付けているにすぎません。
これと同じことをオーストラリア人はしていますが、日本人に対しては許されるのでしょうか。答えはイエスです。許されると考えているのです。オーストラリアは原住民に対してだけでなく、アジア人も、アフリカ人も昔は簡単に住むことができないほど、白人優越主義が強い国でした。今は表立って、そんなことは言えません。鯨を介して、この差別が続いている。
シーシェパード
日本の漁船などに体当たりをして問題となったシーシェパードのような団体が、オーストラリア社会で受け入れられていることも注目すべき事実でしょう。もっとも、この団体のやり方は多くの批判を受けていますから、オーストラリア人の中にも良く思っていない人もいるでしょう。
シーシェパードの母港はオーストラリアですが、シーシェパードの資金源は世界各国さまざまなところから集まっております。私が知っているのは、ハリウッドの有名な俳優さんです。彼らは億単位で寄付しております。ただ、これだけでは足りない。
私は、私たちの知らないところでどこかの大きな財団が、数十億単位で支援していると思います。体当たりして、大破しても、すぐに新しい船が出てくる。「フォロー・ザ・マネー」と私は良く言いますが、シーシェパードの裏には非常に強大な力がついていると思います。出なければ、「テロ」といっても良い彼らの行為が、何度も繰り返される現実に説明がつきません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年5月上旬号「捕鯨外交」-8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。