自由度ランキング61位
興味深い統計があります。報道の自由についての統計です。NGOの「国境なき記者団」が発表しております。それによると、2015年度は1位がフィンランド、2位がノルウェー、3位がデンマークでした。日本は61位で、隣国の韓国は60位でした。
日本におけるマスコミの自由度は低い。国民ほぼ全てがスマートフォンを持っているこの時代、福島のニュースがどこにもない。誰も手に入れることができない。現政権に対して都合の悪いことや、大手企業にとって良くない出来事は表に現れてこないわけです。
日本では皆さん、言論の自由とか、報道の自由とか、さらには学問の自由とか、「自由」という言葉を好んで使います。しかし、実践が全く伴っていない。
日本社会の閉鎖性
日本は現在61位ですが、2010年には11位にランクしておりました。しかし東日本大震災を境にして、ランクが急下降している状況です。2012年と2013年は53位、2014年は59位でした。これは、福島についてのメディア規制のあり方や、日本の世相を如実に表していると思います。
アメリカのメディアから派遣された特派員たちは、日本社会の閉鎖性についてよく指摘しています。例えば、特派員たちにとって記者クラブは「ムラ」社会のようなところであり、よそ者は決して入ることができない、などと言われています。記者クラブに入らないと、まともな情報も得られないと嘆いていました。
しかし、記者クラブで流される情報は、単に政府高官が話した内容そのままです。それを日本のメディアは編集もせずに、何の意見も加えないで、そのまま出しています。それがあたかも、唯一の真実のように報道するわけです。
批判的精神の喪失
メディアは無批判に政府の報道をそのまま流す。その情報を受け取った国民は、これまた無批判にその報道を真実だと思いこむ。メディアも、国民も、批判的な精神を忘れてしまったように思います。
まずは、マスコミの持つ本来の仕事に戻るべきではないか。すなわち、政府発表をただ鵜呑みにするのではなく、発表の内容を真摯に精査する、裏をとる、検証する、といった姿勢が求められるのではないかと考えるのです。最近ある政府高官が、マスコミにおける「政治的中立」について語っておりましたが、とんでもない。政治がマスコミの内容をチェックしてはいけない。
オバマ大統領が、例えば『New York Times』紙に政治的中立を守れ、と言えるのでしょうか。言ったら大変なことになるでしょう。日本の政治とマスコミの関係は、大きく間違った方向にねじれています。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。