From: 岡崎 匡史
研究室より
金(ゴールド)は、文明が発祥したときから人々を魅了してきた。
しかし、ゴールドは魔物のように、人に取り憑くこともあります。
もし、ゴールドを生成することができれば、大金持ちになれるのでは?
あなたも、このような誘惑に駆られたことがあるかもしれません。
しかし、歴史を紐解くと、ゴールドを創り出すことに生涯をかけた人々がいます。それが「錬金術師」です。
錬金術師の活躍
「錬金術」と聞くと、漫画やオカルトの世界の出来事のように思われてしまいます。実際、錬金術師は「ペテン師」「偽科学者」と揶揄(やゆ)されるように嘲笑の的とされてきました。
しかし、中世のヨーロッパでは、錬金術師が国王の保護に置かれていたこともあります。たとえば、イングランド王のヘンリー6世(Henry VI・1421〜1471)は、錬金術の研究を促している。
そもそも、なぜ、王様は錬金術師を大切に扱ったのか?
それは、もし本当に錬金術師がゴールドを創り出すことが出来れば、国の財政を賄うことができるからです。戦争に勝つためには、潤沢な財政が不可欠。君主は、国庫を増大させようと錬金術師を雇ったのです。
ニュートンと錬金術
ゴールドの輝きに目を奪われ、ヨーロッパの君主たちが見たものは幻影でした。
錬金術師のなかには、価値の低い金属を混ぜて、金が増えたかのように見せかけた者もいます。さらには、貨幣の偽造にもなりかねない。
実際、他の金属や物質から「金」を生成することなぞ出来ません。そのため、錬金術は「黒魔術」と蔑まされたのです。
しかし、ゴールドを人工的に作り出したいという欲望と探究心は、優れた発明や実験方法を生み出す契機となった。原子番号15番の元素リンは、錬金術による実験のさなかに発見されています。
ちなみに、近代科学の祖であるアイザック・ニュートン(Isaac Newton・1642〜1727)は、イングランドで活躍した医師で錬金術師のジョージ・スターキー(George Starkey・1628〜1665)の弟子です。
万有引力の法則を導き出したニュートンでさえ、錬金術にのめり込んでいたことは驚きです。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・レベッカ・ゾラック & マイケル・W・フィリップス・ジュニア『金の文化史』(原書房、2016年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。