独裁国家の行く末
アジアにおける難民について、今もっとも心配されている事態は、北朝鮮の崩壊です。「金体制」が崩壊すると、大陸側へも、日本海側へも大量の難民が発生するでしょう。
金体制による大粛清の様子を見ていると、穏やかではない雰囲気が伝わってきます。粛清には、指導者の被害妄想がつきものです。「あいつは、俺を見るときの目つきが悪い」「俺を暗殺しようと思っているに違いない」などと考え、大勢殺しています。側近の多くが粛清されていますから、金体制を支える人材は枯渇しているのではないか。人材なき体制の存続は危うい。
もう一つは中国です。習近平氏は中国では人気かもしれませんが、米国から睨まれています。現在の共産党の命綱は経済です。15〜16年続いたバブルが崩壊に向かっています。中国発の経済恐慌が起きれば、まずは中国国内で職を失った人々が難民となり、九州地方や中国地方に大勢やってくるでしょう。1万から10万の中国人らが、島根や鳥取砂丘に上陸。
武装難民説
日本に押し寄せてきた難民らが武器を持っていたらどうでしょう。「武装難民説」は冗談ではなく、起こり得る一つのシナリオとして想定すべきものです。
難民の保護に向かった日本人たちが炊き出しをしようとして、襲われたらどうしますか。自衛隊に来てもらいますか。相手が攻撃してこないと、自衛隊は反撃できません。では、米軍に来てもらいましょうか。お願いすれば出動してくれると思いますが、様々な条件が提示されるでしょう。借金をチャラにしろ。新たな国債を買え、と。
そもそも難民なんて発生しないし、武装難民なんぞ馬鹿げていると考えたくもなりますが、アジアで起こらないわけがない。日本海なぞ、琵琶湖と同じぐらいの感覚です。カヌーで渡れる。遣唐使の時代を思い出してください。
日本へは来ないと信じる人へ
中国大恐慌が起きた場合、それでもなお日本にやってくる難民は少ないと考える人もいると思います。しかし、現在の中国人たちの所得状況や経済環境を見ますと、自分たちより貧しい地域に行くとは考えられない。
香港は魅力的な選択肢かもしれませんが、とにかく狭い。難民たちが中東や東南アジア諸国に向かうとも考えられない。中央アジア諸国には希望があるかもしれませんが、イスラム教徒の国なので馴染めないでしょう。
選択肢を狭めていくと日本が残ります。難民問題が、遠い中東やヨーロッパの話だと思ったら大間違い。明日は我が身です。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年9月下旬号「難民」− 9
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。