From: 岡崎 匡史
研究室より
新型コロナウィルスの影響で、航空業界は大きな痛手を受けています。
定期便の運休や欠航なども相次いでいる。発着する航空便の減少で、国際郵便を出すにも一苦労です。配達の遅れが出たり、一部の国や地域には郵送できないこともある。国際郵便の大手「フェデックス」(Fedex)を利用して、ようやく私も書類を送ることができました。
世界の大空を飛び回る大型旅客機は、アメリカの「ボーイング」、フランスの「エアバス」が有名です。この2社が、航空機製造メーカーの代表格。なぜ、ここに日本の企業が名を連ねていないのか?
航空機産業禁止令
太平洋戦争中、日本海軍から依頼を受けた三菱重工業は「零戦」を開発。零戦は、一千馬力の小型エンジンを搭載し、徹底した軽量化を図り、空気抵抗が少なく、抜群の旋回性を誇った。一時的だとしても、アジア太平洋の制空権を握っていた。
敗戦を迎えた日本を占領したGHQは、日本がアメリカに刃向かう姿を二度と見たくない。日本経済は管理されるべきである。だから、重工業を抑圧した。1945(昭和2年)11月、GHQは「航空に関する研究・製造・運輸の禁止」(SCAPIN 301号)を発令。航空機産業は御法度とされた。
GHQが去り、1953(昭和28)年にようやく国策会社「日本航空」(JAL)が誕生。しかし、占領期における7年間の空白は大きい。人材が途切れ、「Made in Japan」の飛行機開発は遅れ、大手航空機製造メーカーの市場に入りこむ隙間もなかったのです。
ハブ空港争い
では、旅客機が乗り降りする日本の空港は、いかなる評価を受けてきたのか。
日本の海外への窓口は長い間、「成田空港」でした。交通が不便でしたが、アジアのハブ空港としての役割を果たしてきた。しかし近年、成田を使わない飛行機が出てきています。「羽田空港」に変わったという意味ではありません(私は羽田とサンフランシスコ便を頻繁に使いますが、羽田空港はとても清潔です。その一方で、サンフランシスコ空港の老朽化と不衛生さには困り果てています)。
たとえば、アメリカからアジアへ向かう場合、成田を経由してから、目的地に向かうのが一般的でした。しかし、ここ数十年、成田を経由するのではなく、韓国のソウルを使うエアラインが出てきている。
さらに、大型長距離飛行機の出現で、アメリカとアジア各国をノンストップで往来できるようになった。つまり、日本そのものが素通りされているのです。
アジアでは、香港が注目を集めています。世界の空港で貨物取扱量は、香港がトップ。2016年9月にオーストリア航空は成田から撤退し、香港線を新たに開設(2018年5月に成田便を再開)。ヴァージン・アトランティク空港も成田から撤退し、香港線に最新鋭のボーイングを投入。
はたして日本は、アジアのハブ空港になれるのか。日本製の飛行機が世界を席巻する日は来るのだろうか。それとも、コロナ後の世界にとって、外国との往来が少ない方がよいのか。
空の旅も不便な日々が続き、航空業界に再編の大波が押し寄せてきています。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・東京大学航空イノベーション研究会編『現代航空論』(東京大学出版会、2012年)
・チャーリィ古庄『旅客機を見れば世界が分かる』(イカロス出版、2016年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。