「偏差値」という病
偏差値は病的です。1ミリ、2ミリの違いを人間に、特に18歳の子にくっつけて、注射して、「これがなければおまえは死ぬぞ」というぐらいに偏差値、偏差値と言っています。大学も必死になり、低い偏差値に高い下駄を履かせようと一生懸命になっています。ここからもう、日本の教育は崩壊しているのです。
私が学生の頃は偏差値がありませんでした。アメリカから帰ってきたときに、偏差値というのはどういうふうに計算して、どういう意味を持っているのかということを説明してもらいました。頭のいい先生がご説明してくださいましたが、説明されればされるほどわかりませんでした。
それは、意味がないからです。私はそれに、これは100円、これは1万円という価値をつけておりませんから、説明をされてもその大切さがわからない、すなわち大切じゃないのです。
ガラパゴス症候群
日本列島はガラパコス群(ガラパゴス諸島)と同じで、日本の国内だけで大学の1位、2位を決めております。それゆえ携帯と同じように日本の大学もガラパゴス症候群になっています。この小さい日本で何をやっているのかと。それ偏差値とか、それ何とかかんとか、どこの大学が有名だとか、そうした話ばかり聞こえてきます。
大学は大学で、必死になって養成した男女が世界を相手に歯が立たないことに気づいています。最近では日本でも使えません。教育のやり方が間違っている。間違っていることがわかっている人は、日本にも大勢おられます。
教授も頭を抱えて、帰り道に泣いていますから。どうしていいか、わからない。変えようとしたって日本の教育は政治に牛耳られていますから、文部科学省が変えると言わなければ変わらない。教育が教育ではなくなり、政治の道具になっております。これは大騒動です。
今、世界のランキングで言われましたように、日本にも有名な学校は5~6校ありますが、何番に入っているのですか。望遠鏡で見なければ見えないところにおられます。TOP10にも入っていない。オリンピックのマラソンで20番や30番に入ってきて、名前は売れるのでしょうか。マラソンなら、日本が1~2位で入ってこなかったら日本人じゃないような扱いをします。
人生はマークシートで決まるのか?
ところが世界の大学ランキングでは、日本はもう何十年もトップ10に入っていない。トップ20にも入っていない。日本の皆さんにとって、これは大騒動です。
ランキングだけが問題じゃない、ランキングだけで決まらないと言われる方がおられますし、私も時々そう指摘しましたが、最終的にはランキングで全てが決まっています。
私たちは、ランキングが大好きな国です。自動車で1番とか、世界で数学が1番、レスリングで1番とか、私たちは大好きです。ところが30位、40位になるから、大切じゃないといっている。日本で一番大切なのは教育で、そのトップにある大学のランキングで日本が入っていないというのは、これは屈辱か大失敗したかのどっちかです。
ガラパゴス症候群です。日本国内だけで比べています。比べ方も出たときの成績ではなく、入るときの入試です。私が受けていたころの入試は、実際に鉛筆と消しゴムで書いたのです。
日本に帰ってきて日本の大学で勤務したときに、マークシートというのがありました。これは何だろうと思っていたら、1つの問題に4つの答えが書いてあり、そこにマークすることで解答用紙が自動的に作成されてしまう、というものでした。
何で1つの問題に、答えが4つも書いてあるのか。答えなんか書いておくな!自分に書かせろ。4つだったら当たりはずれですぐにわかりますから、10ぐらい載せたらどうですかと私が言ったら、ばかにされました。問題1つに答えは4つというフォーマットが、決まっているわけです。
『西鋭夫のフーヴァーレポート』より
2015年8月下旬号「大学ランキング」−1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。