日本の岐路
太平洋戦争を境目として、「戦前」「戦後」と日本の政府、社会、文化、経済等を区別していた日本は今、「戦後日本」が終わり、新時代が始まった現在、日本の姿勢について、日本の将来について、徹底的な政策方針の討論を始めるべきだ。
その討論の中で一番大切な議題は、日本が50年間懸命に無視した「国防」だ。今後、めざましく台頭してくるであろう軍事大国中国の動向に注意を払いながら、日本とアメリカの安全保障条約の見直しをしていくことは当然である。
中国に近づくアメリカ、そのアメリカをあやつる中国という現状を目の前にして、無策のまま右往左往していれば、日本国の破滅だ。
大国としての指導力
日本は世界大国であるアメリカにへつらい、甘え、カジを失った巨体ロシアや中国にびくびくする心理状態から抜け出し、日本の安全のためにも今までのような根性のない時代は終わらせなければならない。
日本は世界の大国なのだが、日本国民にこの事実が把握できていないし、しようともしない。二言目には、「資源のない小さな島国だから......」が逃げ口上として出てくる。
今まで優柔不断を外交手段として責任回避をしてきたが、日本は大国になりすぎ、もうそのようなカラクリでは逃げ切れない。世界各国、特にアジア諸国は日本にもっと指導力を発揮してもらいたいと期待している。
心の成長を
私がアメリカに入国した1964年当時、「メイド・イン・ジャパン」は粗雑商品の代名詞であった。今や、最高級製品の代名詞だ。みごとで華麗な変身である。日本人としてそれを誇りに思う。だが、精神的変身、すなわち日本の経済力や技術力に見合った「心の成長」はそこにはない。
戦前の日本帝国の興亡を、日本国民は誇りを持って学ぶべきである。「戦争犯罪」だけが日本の歴史ではない。激動するであろう21世紀に向かって、日本はいかに生き抜けるかについて、真剣に政策論争を行うべきだ。歴史の一片だけを見て、国の「歴史観」をつくってはいけない。
長い歴史を持った日本は、その歴史を全面的にとらえ、日本独自の「歴史観」をつくり上げるべきだ。今までのように「アメリカ様への他力本願」では日本の自信喪失につながり、いつまでもアメリカの「日本占領」が続くのである。
西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
結び/後記 富国日本の現状−3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。