From:岡崎 匡史
研究室より
アーカイブス(Archives)という言葉は、日本で広く知れ渡っているとはいえません。
アーキビスト(Archivist)となると、さらに認知度は低くなります。
アーカイブスは図書館のようなもので、アーキビストは司書かなと、ざっくり理解されています。
アーカイブスと図書館
アーカイブスと図書館の大きな違いは何か?
それは、保存している史料の性質が異なっていることです。
図書館におさめられている書籍は、出版社を通して公刊されたものです。
その一方で、アーカイブスに保管されている史料は未刊です。市場には流通していません。
図書館にある本は、本屋やアマゾンにもおいてありますし、他の図書館でも入手可能です。
しかし、アーカイブスにある史料は、誰でも入手できるものではありません。
つまり、一点物なのです。だから、史料の価値が高い。
図書館の書籍のなかには、時間が経つと破棄されるものもありますが、アーカイヴスの史料は半永久的に保管されます。図書館に入れば、誰でも探している本を自由に手に取り、貸出ができます。
ですが、アーカイブスの書庫へ自由に出入りすることは出来ません。
アーキビストに読みたい史料を伝えて、運んできてもらいます。
ページの列び順の逸脱や他の史料と混在を避けるために、一つの史料箱しか机の上に置いてはいけません。
当然、貸し出し不可。
コピーなら大部分のアーカイブアスで許されてます。
アーキビストの地位
アメリカでは、アーキビストの地位は高く、社会的に認知されております。
特化した知識と力量が求められるので、大学院で専門的に「図書館学」を学びます。
人類の貴重な史料を保管し、後生にわたって伝える重要な職業です。
研究者もアーキビストの手助けやアドバイスがなければ、研究がおぼつかない。
研究者よりも史料に精通しているのが、アーキビストです。
図書館とアーカイブスには違いがあれど、共通のミッションを掲げています。
それは、 重要な資料を保存し、誰でも知識にアクセスできるようにする。
そしてなによりも、先人の残した遺産を次世代のために伝えることです。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
Gregory S. Hunter. 2003. Developing and Maintaining Practical Archives. New York: Neal-Schuman Publishers, Inc.
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。