変り身の天才
政治本能抜群の吉田首相は、素早く、しかし秘密に、マッカーサーの新解釈に同意した。
秘密にしたのは、日本国民がマッカーサーの熱烈な純粋平和主義に感化されていたため、アメリカの都合で、一夜にして信念を変えた吉田首相を許さないことが明白だったからである。
国務省は、吉田首相の鮮やかな変身を見た。バターワース国務次官が述べたように、「吉田首相は、老獪にも自分自身が米軍基地に賛成するのか反対するのかをはっきりと表明することを避けたが、彼は疑いもなく基地に賛成している」。
アチソン国務長官は、
「日本国民の間に軍事占領支配から自分たちの自由を取り戻したいという願いが高まってきており、もしアメリカが何もしなかったら、この日本の願いはより一層強くなるであろう」
と心配していた。
ソ連邦の影
アチソンが最も恐れたのは、日本の独立願望そのものではなく、ソ連がこの日本国民の感情を利用する可能性であった。
もし、最初にソ連が平和会議を提案し、アメリカがそのソ連の提案を拒否したとしたら、日本国民はアメリカが日本独立に反対していると受け止め、アメリカに対して敵意さえも持つのではないかと懸念していたのだ。
アチソンは、「ソ連の提案は、アメリカに不意打ちを食らわせることになるだろうし、事実、いつ何時、平和会議を提案してくるかもしれない」と焦っていた。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。