「有意義な国民文化」の所在
しかし、日本が新たな自分を追求する際に注意しなければならないことは、「絶えず新要素を付け加えていくことから生じる摩擦を避けるためにも、まず有意義な国民文化」とは何かを認識しなければならないと警告している。
文部省は、「有意義な国民文化についての認識」を見つけ出す努力をさせられ、厳しい試練に曝されることになる。
「近年、日本の学校で教えられてきた修身は、従順な国民の養成を目指していた」
と教育使節団が述べているのは、日本の「忠誠心」や「愛国心」は真の愛国心ではなく、善悪を判断する能力に欠ける国民を作るのに、教育が悪用されたと言っているのだ。
殺されかけている教育勅語への追い打ちだろう。
新生日本の倫理観
日本には新しい倫理観が必要だ、と使節団は言う。
どうすれば、日本の教師や学生が民主主義の倫理観を体得できるのか?
「教師自身がよく教育されており、独立の精神を持ち、愛情から出た忠誠心があり、教師一人当たりの受け持ち生徒数が少なければ、倫理的訓練は自然とうまく解決する」
と答える。
すし詰め教室
絶望的なすし詰め教室で教える日本の先生たちの学級人員は、初等80人、中等60人まで認められていたが、この数より多いクラスは沢山あった。
私が小学校一年生の時のクラスには、60人近くいた。担任は男前の伊藤先生。先生は栄養不足から起こる結核で、一学期後、亡くなられた。
良妻賢母の秘訣
教育使節団は、倫理観をさらに明確に説明しようとして、
「女性は〝良〟妻になるためには自ら善良となるべきこと、〝賢〟母になるためには自ら賢明になるべきことを悟らなければならない」「善良は偏狭からは生まれない。賢明は温室栽培の植物ではない。それは、広範な社会体験と政治的実践とから育つものである」
と書いた。
教育使節団も、日本人の知的年齢を12歳だと思っていたのであろうか。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。