追求
ニュージェント 「我々が大きな関心を持っているのは、文教審議会と文部省とCIEとの関係である。もし総理からあなたに相談があったのであれば、あなたから私に連絡があったであろう。文教審議会について、あなたから報告を受けていない」
高瀬 「審議会はまだ一度も開かれてません。教育勅語を新しく作ることを決定したという事実はないと思います」
ニュージェント 「もしそうなら、首相が新聞の誤報を修正すべきではないか」
高瀬 「修正すべきものであれば、官房長官がなし得ると思います」
幻の「吉田勅語」
ニュージェント 「新聞記事によれば、文教審議会の第一の仕事は〝吉田勅語〟を作ることと伝えられている。GHQが重大な関心を寄せ、遺憾に思うのは次の理由による。第一に審議会の設置が決定後、既成事実としてGHQに報告されたことだ。第二に、すでに文部省、教育刷新委員会と国会文部委員会がある。一体全体、文教審議会はいかなる役割を果たし得るのであろうか。第三に、日本の新聞は〝教育宣言〟に対し、これは政治的な動きだと観測している。GHQが占領開始以来、特に努力してきたことは政治と教育の混同を避けることであった」
高瀬 「総理は5月7日の閣議で国民の道徳退廃の現状を改善するために、審議会を設置しました。時間的に問題があり、私が事前に相談できなかったのは遺憾であります」
文教審議会の存在意義
ニュージェント 「本当のことを言えば、私はすでに、5月3日、文教審議会委員のリストを入手していた。そして委員の人物調査に一週間も費やした(いかにして入手したかは、触れていない)。私は日本の教育は文部省と教育刷新委員会で十分に運営されていると思っている。率直に言えば、文教審議会は存在する理由も、その価値もないと思っている」
新しい「吉田勅語」は作られなかった。
1947年3月31日に公布された「教育基本法」は、夢想的な憲法第9条に基づいた教育宣言であった。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。