民間情報教育局
1945(昭和20)年9月22日に「マッカーサー元帥の文部省」として、東京・内幸町に東京放送会館の中に設立された「民間情報教育局(Civil Information and Education Section, CIE)」が日本教育を担当した。
CIEは、毎日、文部省の役人たちと会い、またCIE局長は文部大臣と、教育部長は事務次官と、定期的に会合をもった。
CIEの業務(使命)は、日本国民に「民主主義」を教えると同時に、「日本はアメリカに戦争を仕掛け、敗け、降伏した」という罪悪の現実を、マスコミや学校教育を通して日本国民に徹底させ、日本の教育の中に存在している「軍国主義、国家主義、軍事教練」を完全に取り去ることであった。
密告者
もう一つ大切な役割がある。
「マッカーサー元帥に、日本国民の世論の動向を具に、かつ速やかに通報する」。マッカーサーが自分の人気を神経質に気にしていたことは有名であり、CIEの中に、「世論・社会調査部」が設立された。
戦争に敗けると、かつての味方を敵に「売る」者たちも出てくる。
退職した文部省高官二人が、1946年末、GHQに差し出した手紙(英文)は、文部省がアメリカの改革に絶望的な抵抗をしている官僚たちの巣窟ではないかと感づいていたGHQの疑いを裏付けた。
その著者の一人、金子健二は東京帝大英文科卒で、広島高等師範学校の教授をした後、文部省の督学官を歴任し、欧米に留学の経験もあった。
もう一人、岩松五良も、東京帝大東洋史学を1935(昭和10)年に卒業し、海軍大学の教授をし、文部省実業学務局教育課長を歴任し、官房長をも務めた。
教育界の地下帝国
「文部省の官僚たちは非常に保守的で、現状維持に全力を尽くしております。彼らは日和見主義者である上、極めて親ナチ・ドイツ派でしたが、敗戦のため、今、親米の振りをしています。これはGHQが恐いからです。彼らが吐く台詞は彼らの信じていることとは違うので、細心の注意を払われるようにして下さい」
「文部省の高官は、ほとんど全員東京帝大卒であり、火曜クラブという名の学閥を作っています。これは邪悪な陰謀の温床で、教育界における地下帝国なのです」
「アメリカ人は率直で正直であるため、これらの礼儀正しく、微笑みかけてくる者たちが危険な策略を秘めており、しかも、人を操る術に長けているので、騙されはしないか、と私たちは心配しております」
CIE(二代目)局長ドナルド・ニュージェント中佐は、「これは日本側の情報だが、留意するべきである」と部下たちに警告した。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。