大学院経営
今では、修士課程や博士課程に進学する日本人学生の数も少なくなってきました。優秀な人材が大学に残らない、という状況が生じているのです。しかし皆さん、大学院で教えている先生方やそれを運営しているスタッフの方々もいるのです。学生が少なくなったら困るのではないですか。
日本にあるすべての大学院で起きているとは言いません。しかし、半分以上の大学院で実際に起きているのではないか、と思われることは、海外からの留学生がわんさかいらっしゃるということ。そしてそれによって、大学院運営の現状がなんとか保たれているということです。
これはもう「情けない」を通り越して、「やめなさい」と言いたいのですが、止めることができないのです。海外からの留学生、特にアジアからの留学生が多いのですが、彼ら・彼女らがいないと大学院経営が成り立ちません。だから金を稼ぐために、出来ようが出来まいがどんどんと学生たちを入れるわけです。
誰が論文を書いているのか
大学院のある先生と2年ほど前にごはんを食べました。その時、私は「ところで先生、そこは大学院生がいるのですか」と尋ねました。そうすると「ああ、どこどこの国の学生だけです。それからどこどこの国出身が一人」などとおっしゃっていました。
それで「その子たちの論文指導、大変ですね。書けるのですか」と質問しましたら、その先生は何と言ったと思いますか。「いやいや、90%近く、私が書きますよ」と答えたのです。大袈裟に言われたのだと思いますが、おそらくかなりの部分に手を入れないと「論文」としての形にならないのでしょう。そんな状態なのです。
これはゆゆしき問題ですが、誰もそこを見ていない。規則ばかり作り、しっかりとした中身の審査がないからこんなことになっているのです。私は「先生も大変ですね」とニタっと笑って言いました。
出来る学生の悲劇
大学院にはもちろん出来る学生もおります。優秀な留学生もおります。しかしお金がないのです。それで学生たちは、10万、20万のために、いろいろな申請書や企画書を書いているのです。これがどれだけの負担になっているかわかりますか。
よく出来るやつには5年間ぐらい全額奨学金を出して、生活費も出して「頑張れよ。おまえ自身のためにも、家族のためにも、国のためにも、大学のためにも頑張れよ」と、そういう使命を授けて、千万単位の奨学金を出すと。そうすると、彼らはもう嬉しくなって必死に研究しますよ。
そういう、いわゆるモティベーションを掻き立てるような組織は日本にはありませんし、またそういう金の使い方は絶対にしません。日本は教育にもっともっと金をかけなさい。そして、金を出したら、いちいちぐうたら言うな。
若い時に、お金をドンと出してくれた人や財団、大学をその人は一生忘れませんよ。偉くなって、有名な学者になって大きな恩返しをしますよ。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ノーベル賞と日本の未来(2022年1月下旬号)-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

