二〇一二・憲法草案

by 西 鋭夫 November 13th, 2025

最高指揮官は誰か

自民党は2012年に憲法草案を公表しております。そこでは安全保障のための国防軍の創設が主張されております。我が国の平和と独立ならびに国および国民の安全を確保するための国防軍であり、内閣総理大臣が最高指揮官と位置付けられております。

しかし総理大臣が指揮官として、この大きな権力を本当に持てるかどうかは疑問です。総理には絶大な力がありますが、実際のところ何か新しいことをしようと思えば、各省庁や与党内の力学に縛られ、総理個人が一声で何かを決めていくということが難しい状況だからです。ましてや軍事的な決定をするとなると相当難しいでしょう。いざ戦争になった時、誰の意見を聞くのか。海軍、陸軍、空軍、海兵隊、それともトランプさんの指示を聞いて、動くのか。

私たちは米国の足軽ではないでしょう。でも、誰が責任をとって最終的に決めるのか、それが不明なのです。

 

大統領制

これは日本にはよくある話ですが、もし本当に国防軍を作り、軍を動かしていくことになるとすれば、内閣ではなく、大統領制を導入する必要があると思います。しかもそれは、国民が投票する大統領です。これなら責任が非常にわかりやすい。大統領が絶対的な責任をとる。

たとえば自衛隊員が500人ほど戦死したらどうするのか。私たちはおそらく受け入れられないでしょう。どこかで自衛隊員が戦死するという事態ですよ。この責任を誰が取るのかということです。現状では全くそれが見えず、大混乱に陥るでしょう。責任の所在を明らかにするためには明確な最高司令官を定める必要があります。

明治憲法でも軍隊は本来、内閣がコントロールするはずでしたが、明治憲法の中に「海軍・陸軍の親分は天皇陛下」と書いてある、いわゆる統帥権が想定されておりました。その結果として、軍部は「内閣なんかに指導されない」と突き放し、「私たちは陛下の仰せの通りに」ということで動きました。そのために戦争遂行へと進みました。

憲法で明確にするだけでなく、体制自体を変えていかないと同じことが起きます。たまたま9条があるので軍隊は持てませんが、その代わりにアメリカ軍が70年間も駐屯し続けております。すなわち私たちはアメリカの言うことを聞かずして動くことが出来ないのです。

 

汚職

最後に、私たちは政治家に対してもっと厳しい規則をつくったほうがいい。汚職はだめです。お金をもらったら、その出どころを明らかにする。政党も、どの企業がどれだけ寄付したか、毎年発表しなければならない。調べればわかると言われますが、「ノー」です。インターネットで発信するか、新聞・雑誌で今年の寄付リストを書かなければいけない。そうしていかないと、政治に対する国民の信頼を得ることはできません。憲法改正に向けて動き出しても、国民がついていけません。

代議士の数も、県別ではなく、人口別にすべきだと思います。あれは非常に不公平です。東京からはもっと、そして大阪からももっと多く出なければならない。人口別ですよ。東京なら50万か100万票を取らないとなれない。しかし田舎に行くと、その10分の1でしょう。これは非常に不公平です。人口別にすれば、おそらく議員数は減ります。

国の形を思いっきり変えていくのです。それができるのは憲法改正のタイミングです。

西鋭夫のフーヴァーレポート
憲法改正(2017年5月下旬号)-6

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。