憲法誕生秘話
憲法を改正すべきか否か。国内には改憲を目指す勢力と護憲を貫き通そうとする勢力があります。しかし歴史を紐解くと、この関係は単純ではなく、複雑にねじれまくっていると思います。
振り返ってみましょう。まずはマッカーサーが憲法草案を書き、それを子分のホイットニーに渡します。そしてそれを吉田外務大臣と、その友達である松本丞治先生、彼は当時の日本で有名な憲法学者でしたが、に手渡しました。
もちろん二人とも英語は読めますから、そこで読み始めます。最初の一ページに、天皇が “the symbol of the nation” と書いてあります。吉田と松本は、そこで涙がボロボロとこぼれます。これはホイットニーが言っているわけです。「号泣した」とか「慟哭した」と言っている。すなわち、二人にとって全く発想もないことがここに書かれているとして、愕然とするのです。9条のところに来ると、もう永久に武器を捨てるという話です。どほどの衝撃を受けたか想像に難くないと思われます。
憲法論議の深淵
その原本が日本語に訳されて国会で審議されたとき、共産党の親分・野坂参三と、政府の親分・吉田茂が大げんかを繰り広げました。
野坂参三、彼は共産党の大親分ですが、「こんな憲法はだめだ。特にこの9条、こんなことをしたら日本はつぶれるではないか。正義の戦争はある。悪い戦争は日本のあの侵略戦争だ。これから国を守るために、しなければいけない戦争もある。そのために軍隊は持つべきではないか、国防軍を」と主張しました。それに対し吉田は「あんたのようなセレブが、いつも戦争を始めるのだ」と反論しました。皆さんからはやんや、やんやの拍手喝采です。

すなわち、当時の共産党はあの憲法に大反対でして、9条など入れたら日本が潰れると指摘していたのです。一方の吉田らはマッカーサー憲法を仰ぎ、これこそが日本に必要であると主張しておりました。これが歴史の源流です。
いつ公布するのか
安倍総理は2020年に新たな憲法を施行したいと考えており、主に憲法9条の改正を視野に入れています。憲法9条の是非、すなわち「賛成」か「反対」を国民に問うことは、憲法改正に向けて大きなステップになると思われます。しかしこれだけでは不十分です。9条だけではなく、憲法全体を日本人の手で全て作り直すことが必要です。
この動きを後押しする背景も重要です。これは一つには、北朝鮮などのいわゆる敵対国が暴れ出すかにかかっております。暴れなかったら、これは「何や、一人相撲をやっているのか」という世界になります。しかし、「危ない」と言われながら、北朝鮮はその一方で異常に賢く、日本の領海に対する姿勢は慎重です。おそらくトランプ政権の出方を見ているのでしょう。トランプ政権も「危ない」と言いながら、日本の防衛費の増大などを要求しているように見えます。
日本は小手先の小さな法律ばかりいじるのではなく、大元をやらないと意味がないでしょう。これから安倍政権は今後も続くでしょう。叔父の佐藤栄作も三期やりましたし、祖父の岸信介は二期やられたわけです。そうすると、すごいですよ。あの三人でもう何十年も政権を担うことになります。
西鋭夫のフーヴァーレポート
憲法改正(2017年5月下旬号)-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

