ウクライナ戦争と日本の未来

by 西 鋭夫 October 20th, 2025

中国はどう動くか

中国も台湾併合を虎視眈々と狙っています。習近平さんは「台湾統一は歴史的任務だ」とはっきり言っています。

私は、中国はロシアをまねして台湾を取りに行くのではないかと思っています。プーチンさんがあれほどのことをやっても、ロシアが攻撃されることはないのです。ウクライナに対しても直接的に「助けてやる」と手を差し伸べた国はありません。やったのは、難民を受け入れるとか、食べ物を送るとか、防御的な武器を支援するとかその程度です。そうなると習近平さんはどう考えるでしょうか。「俺が台湾を取りに行っても、周りで手を出せる国はあるのか」と。インドか、ベトナムか。あるいはフィリピンか。

日本はどうでしょう。私たちは習近平さんに向かって「こら、攻撃するぞ」と言えるのですか。言えません。何もできないのです。アメリカも同じです。バイデン政権は台湾に何もできません。皆さん、あの広大なウクライナを助けなかったのですよ。バイデンさんが日本を助けるでしょうか。助けに行ったら大量のアメリカ兵が死ぬのです。

 

台湾の未来

習近平さんがどのような手段を用いるかは分かりません。武力かもしれないし、経済で攻めるかもしれない。あるいはサイバー攻撃でインフラを止め、要人暗殺を仕掛けていくかもしれません。台湾を徐々に弱体化させ、最後には「中華人民共和国の一部」にしてしまう。そして本土と台湾を瀬戸大橋のような橋で結び、「経済万歳」と叫ぶ未来が見えているのです。その時、日本はどうするのですか。私たちはどこへ逃げるのですか。逃げる場所はありません。

今やアメリカやEUがロシアを制裁すればするほど、中国の利益になる仕組みが出来上がっています。金融、物流、政治、経済、あらゆる面で中国とロシアは助け合っているのです。アメリカは意図せずして中国の覇権拡大を助けていることになる。

皆さん、これはもう完全なるシナリオです。中国とロシアの連携にくさびを打ち込める国はゼロです。打ち込もうとする国もゼロです。アメリカは弱くなり、バイデンさんはプーチンさんを怖がり、習近平さんにおべんちゃらを言う。

 

 

日本の選択

そんな世界で日本に何ができますか。ロシアの経済制裁にわざわざ乗ってしまいました。なぜ乗るのですか。黙っていればよかったのです。アメリカに言われても「私たちは関係ありません」と言えばよかったのです。それをせず、こんな状況になってしまいました。

日本には逃げ場がありません。ハワイまで泳いで行けませんし、船で行けば沈められるでしょう。周りの海にはおそらく潜水艦がいっぱいです。だから憲法第9条で「平和に過ごしました」というのは、もう完全に夢物語なのです。

現実が今、ウクライナで第一幕として開きました。第二幕は台湾です。第三幕は日本かもしれません。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
ウクライナ分割案(2022年3月下旬号)-8

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。