経済制裁という愚策
わが愛する国、日本に文句を言いたいのです。「日本は何を見てロシアに対する経済制裁に踏み切ったのか」と。バイデンさんに殴られたのでしょうけれど、そこで日本はきっぱり言うべきでした。「日本とロシアは非常に近い距離にあり、水産業、森林業、木材、石油開発もやっている。この戦争は私たちには関係がない。だから制裁は出来ない」と。そのくらいのことを言えば、私は岸田さんを「永久に首相でいてくれ」と思ったかもしれません。
それを聞いたプーチンさんは昨日今日こう言いました。「日本との平和交渉は中止だ。北方領土に墓参りに来ていたおじいちゃんおばあちゃんも、もうダメだ」と。結局、70年前の戦争末期に逆戻りしてしまったのです。
アメリカが主導する経済封鎖など大々的に宣伝していますが、何の価値もありません。なぜか。石油は今、日本もドルで買っています。一方、ロシアのように天然ガスも石油も豊富に持つ国は、中国に売ればいいのです。これはドルを通さず人民元で行います。ロシアはその元で中国から必要な物資を買う。巨大な中国と、世界で15〜16位の経済規模を持つロシアが組めば、中国も潤い、ロシアも潤う。アメリカはいらない。まして日本は「アホ」で終わりです。「タラバガニが食べたいのですが」と言っても、「取りに来てはダメよ」、となってしまう。
日露関係のイメージ
日本人よ、怒りなさい
日本はウクライナ問題に全く関係ありません。正直、無関係なのです。それなのに、あるかのように見せかけて、涙が出るほどかわいそうな状態です。ウクライナから難民を受け入れていますが、おいおい、難民を入れるのか。その一方で今、海岸から1日に何百人も難民が入ってきています。その人たちはどうするのですか。
政治家の先生たちはジェスチャーで「私は偉いのだ」と見せつけているにすぎません。マスコミもホイホイそれに乗っかっております。日本国民はバカ扱いされているのです。私たちは怒るべきなのです。
皆さんが一番見たいのは、ウクライナ兵がどう戦っているのかでしょう。ところが報道は「ロシアのミサイルがビルを打ちました、難民がダーッと出てきました、ポーランドへ歩いていっています」ばかり。戦争とはそれだけなのか。死体がゴロゴロしているはずでしょう。そんな報道は全くないのです。これを「おかしい」と思わない方がおかしい。
非核三原則
ウクライナは1991年に独立し、その時「中立宣言」をしました。NATOにも加盟せず、ロシア主導の集団安全保障条約にも加盟せず、さらに核兵器の使用・生産・保有をしない「非核三原則」を国是とした。
ソ連崩壊後、ウクライナは当時1,900発以上の核兵器を持っていました。世界第3位の核保有国です。誰も攻撃できない状態でした。ところがアメリカが主導し、イギリス、フランスも加わって、「そんなものは危ないから破棄しろ。放棄しろ。おまえたちが襲われたら必ず助けに行く」と口約束をしました。ウクライナはそれを信じ、核を破棄してしまったのです。そして今のざまです。誰が助けに来ましたか。誰も来ません。
核を持っていたウクライナは、自ら手放したことで、今やプーチンから見れば「幼稚園児を殴る」くらい簡単な相手にされているのです。「ロシアの領土になれば食べ物も石油も天然ガスもある。幸せに暮らせるぞ」と言われている状態なのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ウクライナ分割案(2022年3月下旬号)-5
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。