軍事侵攻
ロシアのプーチン大統領は、北京オリンピックが終わってからわずか4日後の2月24日、ウクライナに軍事侵攻を開始しました。首都キエフが陥落するのかどうか、情勢は日々刻々と変化しております。3月上旬号ではウクライナ情勢についてお話ししましたが、歴史をさかのぼると、ナチス・ドイツの残党がいないとは決して言い切れない状況です。そして第二次世界大戦の恨みが、ロシアとウクライナの間に深く根づいているという衝撃的な事実についてもお話ししました。
では、この戦いは今後、どこへ向かうのでしょうか。考えたいことは多いのですが、まずはメディアに注目してみましょう。皆さん、戦争が始まってもうすぐ1ヶ月です。アメリカでも日本でも同じですが、テレビで流れる映像はウクライナの女性と子どもばかりではないですか。
ロシアのミサイルがビルに当たった、また別の建物に当たったと、そればかりです。おい、ウクライナ兵は戦っていないのか、と思いませんか。見ていると、日本人の同情心をあおるように感じます。
歴史観なき報道
避難民の姿ばかりが映され、まるでそれだけが戦争であるかのようにコメンテーターたちが語っております。しかし、これはアメリカもウクライナも、そしてまた日本も同じなのですが、歴史観が全くないのです。戦争が始まって一般市民が悲惨な目に遭っていると言いますが、最も悲惨な体験をしたのは誰でしょうか。
今、ウクライナで「一般市民を殺してはいけない」と言われています。しかし皆さん、気を付けなければなりません。誰がその状況をつくったのか。なぜプーチンがウクライナに、突然ではなく周到に準備をして攻撃したのか。その核心がニュースには出てきません。
ウクライナの地図を見れば、その右側の方、東ウクライナにはロシア語を話し、ロシアに戻りたい人々が大勢住んでおります。ここ10年ほど、その地域にミサイルを打ち込んできたのは誰ですか。皆さんが英雄と憧れるゼレンスキー大統領ですよ。
介入の背景
東部の人々は武器を十分に持たず、それでも戦い続け、ついには「助けてくれ」とプーチンに救援を求めたのです。プーチンがそんなことを知らないはずがありません。宇宙衛星で全てが見られる時代です。しかし、その映像は報じられません。都合が悪いからでしょう。
そこでプーチンは「これは終わらせなければならない」と決断して軍を動かしたのです。ロシアには、ナチスに蹂躙された記憶が今も生々しく残っています。老人も子どもも、男女の区別なく皆殺しにされた。ユダヤ人は特別な貨車に押し込まれ、収容所内のガス室にて殺された。
この惨劇を目の当たりにしながら、ナチス側に加担したのがウクライナ人でした。ソ連、つまり今のロシアからすれば絶対に許せない出来事なのです。皆さん、もし自分たちが同じことをやられたら、許せますか。許せるはずがありません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ウクライナ分割案(2022年3月下旬号)-1
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。