機密文書
昨年11月、バイデン大統領は、ケネディ元大統領暗殺に関する機密文書の公開を延期すると決定しました。ホワイトハウスは、その理由を「国家安全保障に関わるため」と説明し、安全保障問題や外交上の懸念、法律上の問題などを考慮した結果だとしています。
ケネディ大統領がテキサス州ダラスで白昼堂々暗殺されたのは、1963年11月22日(金曜日)のことです。ダラス市内でのパレードの最中、頭部へ銃弾を受け、ほぼ即死でした。全世界に計り知れない衝撃を与えた事件です。
バイデン大統領による機密文書公開延期の背景には何があるのでしょうか。バイデン氏の前にトランプ氏も公開を宣言していましたが、当日になって100後悔しますよと言いながら、20しか出しませんでした。バイデン氏はトランプ氏を嫌っており、「上を行こう」と意気込んで公開を表明しましたが、結果は同じで、100公開すると言いつつ、同じように20程度にとどまりました。ゆえに核となる部分は依然として封印されたままです。

アメリカ国民の反応
アメリカ国民は「何を隠しているのか」と疑っていると言えるでしょう。50〜60年も経った今も隠すのはなぜか。もちろん理由はあります。アメリカ人は何も知らないわけではありません。私も含め、あの暗殺は強烈な記憶として残っています。当時、私は日本の大学3年生でしたが、この世代は今でも1963年のその日を覚えています。アメリカ人が日付まで覚えている出来事は、真珠湾攻撃とケネディ暗殺、そして9.11だけです。それほどあの事件はアメリカの民主主義にとって重大な事件だったのです。
文書を公開しないのは、おそらく連邦政府の主要機関が関与していたか、あるいは外国勢力の介入があったからでしょう。冷戦の真っ最中であり、キューバのカストロが関与していた可能性もあります。さらに、ケネディを「裏切り者」と見なした国内マフィアが関わっていたかもしれません。しかし、私たちのような外部の人間には真相は分からないのです。推測や憶測はできますが、確証はないのです。
一度すべての文書を公開すればよいのですが、これは通常のトップシークレットを超える、おそらく「ウルトラ(Ultra)」級の機密でしょう。その印が5〜6回も押されるほどのウルトラシークレットです。あのトランプ氏が公開しなかったことには、私も驚きました。それほどの秘密なのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ケネディ神話の崩壊(2022年2月下旬号)-1
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。