宇宙軍創設の背景
今の暮らしでデジタルがない生活なんて想像できますか。私はかつてそういう生活をしてきたので分かりますが、皆さんはもう無理でしょう。さて、このデジタルの世界ですが、それを一発で壊す手段があります。いま宇宙には衛星がぐるぐる飛んでいます。あのあたりで何か小さな爆弾で爆発を起こせば、その余波で地球上のデジタル機器はすべて停止します。
飛んでいる飛行機は通信が途絶えてしまうでしょう。自動車も動かなくなります。銀行、ATM、全部一斉に止まります。それが本当に怖いのです。だからこそ1年ほど前、トランプ大統領が「宇宙軍をつくる」と発表したのです。宇宙での防衛・攻撃を見据えた軍隊です。そこで活躍するのが、皆さんよくご存知のAIです。人間ではなく、AIがやってくれる。
アメリカがそういう宇宙軍をつくれば、中国も、ロシアも、イスラエルも、他の国々も当然やります。すでに宇宙空間では、各国の人工衛星がぶつからないように軌道をなんとかうまくやりくりしておりますが、その隣で小さな爆弾でも爆発させれば、この放送も一瞬で終わりです。「西が途中でやめた」と思われるかもしれませんが、違います。私がやめたのではありません。つまり、それぐらい脆弱な世界になっているのです。
情報セキュリティー
そうなると私たちの生活はいっぺんに変わります。スマホを握りしめていても意味はありません。結局、私が経験した終戦直後のように、畑に行って自分で食べ物を作る、そんな生活に逆戻りです。それが一発で起こりうるのです。
現在、キャッシュレスだとかデジタルマネーだとか言われていますが、「何を寝ぼけているのだ」と思いますよ。結局、物質を持っていないと終わりなのです。今の学生たちは、「西先生、昔は携帯がなくて、どうやってデートしたのですか」なんて聞いてきます。そいつは殴ってやりましたが、それぐらい私たちはデジタル依存という状態にどっぷりと浸かっているのです。
トランプ大統領が宇宙軍を創設したということの意味がようやく見えてきました。日本人は「月に行って楽しもう」とか、「月面旅行だ」なんてことしか考えていない。
でももし宇宙で水爆などが使われたら、それこそ地球が元の状態に戻るまでに何十年もかかるでしょう。今は「大気汚染が」なんて言っていますが、そんなレベルではありません。空気、水、電気、動かない、そういうすさまじい世界が来るのです。
いま私たちの生活は、すべてデジタルで動いている。そのデジタルが止まったら、飛行機も飛びません。ですから、そのデジタルをどう攻略するのか、攻撃するのか。そうした脅威からデジタルをいかに防衛するのか。戦争の形そのものが変わっていくのではないかと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
日本の国防(2019年9月下旬号)-8
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。