核武装論

by 西 鋭夫 July 17th, 2025

実現可能性

会員の方からとても重要な質問を頂きました。日本が核武装をする場合、どれくらいの日数がかかるのか、というものです。日本政府はそういったシミュレーションを架空でもいいからつくっておく。そしてその結果を公表することで、実際に核を持たずとも「核抑止力」を持つことができるのではないか、という問題意識をお持ちのようでした。

この質問は現実的なものだと思いました。というより、おそらく日本政府はすでにシミュレーションを終えているかもしれません。なぜなら日本には原発がたくさんあるからです。原爆を作るために必要なプルトニウムやウランも大量に蓄えられております。青森県や茨城県の一部にその施設がありますね。

アメリカはそのことをよく知っていますから、「日本は持ちすぎだ。そんなに要るのか。何千発分あるのだ。だったら、俺たちが預かってやる」と、そんなことまで言ってくるのではないと思います。日本はたくさんの原発を動かしてきた国です。原子爆弾や水素爆弾を「作ろう」と思えば、すぐに作れるのです。

日本にはまた核弾頭を運ぶロケット技術もありますし、それを自前で作ることもできます。ゆえに日本は核兵器を作るだけでなく、それを用いる能力も持っているのです。

 

抑止力

問題はそれを「公表するかどうか」でしょう。私はこれに対してはNOです。公表してはいけないと思います。戦闘において、自分の持ち駒を相手に明かすような真似は絶対にしてはいけないのです。

ただ、今のご質問のように、「自分はこれを持っているかもしれない」と、やんわりと相手に示しておく。そうすると敵は日本を攻撃することに躊躇するでしょう。「日本を撃ったら、報復が来る」「1発撃ったら、10発返ってくるぞ」という力を見せておく。それがなければ、国防は成り立ちません。

これはいわゆる暗黙のプレッシャーとでも言えるものです。私はすでに何度も申し上げておりますが、日本の潜水艦技術というのは世界一です。アメリカが欲しくてたまらないほどの技術力です。日本はその技術を活かして、巨大な潜水艦を4〜10隻でも持ったらいい。そしてミサイルを積み込み、それを日本列島の周囲、日本海や太平洋をぐるぐると巡回させればいいのです。

公表する必要はありません。公表しなくても、相手はちゃんと調べてきます。そして、調べた結果、「日本を攻撃したら、自分たちは殺される」ということを知る。それが賢い国防のあり方だと思います。核を持たずに平和神社に行って「お願いです、平和にしてください」なんて祈る時代はもう終わりです。賞味期限は完全に切れました。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
日本の国防(2019年9月下旬号)-7

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。