From:岡崎 匡史
研究室より
2023年11月29日、ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger・1923〜2023年)が100歳で亡くなった。
キッシンジャーには毀誉褒貶があるものの、戦後の世界秩序を形成した偉大な国際政治学者。
キッシンジャーは、ニクソン政権、フォード政権で国務長官として辣腕を振るった。
極秘交渉
キッシンジャーは、秘密外交を好んだ。なぜか?
それは、交渉に参加する関係者が増えれば増えるほど、協議が難航するからだ。
たとえば、アメリカの関係国に事前に交渉内容を教えると、情報が漏れる可能性もあるし、交渉に注文や条件をつけてくる。メディアに漏れると、マスコミ対策までしなくてはならない。さらに、アメリカ政権内部での足の引っ張り合い、高級官僚のサボタージュまである。
秘密外交であれば、それらを心配する必要がない。協議に集中できる。だから、自由に動き回れる秘密外交にキッシンジャーは魅せられていた。
交渉が失敗したとしても、関係者を絞り、交渉自体を秘密にしているのだから露呈することも少ない。
負の側面
問題は、キッシンジャー外交が大成功した「その後」に起こる。
キッシンジャーから蚊帳の外に置かれた国々や関係者たちは憤激して、恨みを抱く。
日本もキッシンジャーから除外されていた国のひとつ。
だから、キッシンジャーには賛否両論あり、秘密外交の負の側面が晩年になって襲いかかる。恨みに駆られた男たちは、キッシンジャーを批判することで溜飲を下げた。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・ジェームズ・K・セベニウス他編『キッシンジャー超交渉術』(日経BP、2019年)
・ヘンリー・A・キッシンジャー『キッシンジャー回復された世界平和』(原書房、2009年)
この記事の著者

岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。