教師の給料をドンと上げろ

by 西 鋭夫 May 15th, 2025

惨状

かつては日本を羨む国が世界中にたくさんありました。しかし今はどうでしょう。政治や経済の分野でも、研究といった面においても、日本はすでに二流、三流国になっているように思われます。そうした中、会員の方から「日本を強くする方法はないのですか。教育への投資をじゃんじゃん行うべきではないでしょうか」というご指摘を受けました。

私も同じ気持ちです。実際には文科省に腹が立っています。文科省は規則ばかりを作っております。規則を作る金があるのだったらその金を学生さんにあげなさい、親御さんにあげなさいと思っています。貸すのではなくあげることがポイントです。日本ほど教育が好きで、学問を崇めている国はありません。しかし教育費や教育にかかる経費は政府が出すのではなく、ほとんど全てを親が出しているのです。親が出せなかったら、おじいちゃんやおばあちゃんが出します。

皆さん、質の高い教育を長期にわたって実施するとなると、どれだけの金がかかるのですか。日本の大学の先生方の給料の低いこと、これはもう何十回もお話ししています。しかし、それよりも残酷なのは小中高の先生です。彼らの給料はもっと低いのです。幼稚園や保育所などの先生にいたっては目も当てられないほどです。バカにしているのか、というレベルです。これをチビチビ上げるのではなく、ドンとあげなさい。教育に情熱を持った人々はわんさかおります。そのやる気を大いに引き出すのです。

教育の基礎の基礎、子どもたちが社会を知り、仲間を知る。この最初のきっかけを担う先生の役割は重大です。その意味を霞ヶ関、永田町のエリート先生たちは理解しているのでしょうか。この教育という現場に関わる皆さんに、ドンと投資をしてください。給料を上げるのです。人材が不足しているというのなら、第一線を退いたおじいちゃん、おばあちゃんたちをその現場に投入して、若い人と高齢世代が一緒になって未来の子どもたちを見守る。そんな現場を作ったらどうでしょうか。それができたら感動ですし、将来の希望となります。

 

現場知らずの官僚たち

現場での苦悩も、そのやりがいの素晴らしさも、日本政府の多くの官僚たち、政治家の先生たちは知りません。知らないで政策を作り、実行しているのです。教育に全く苦労せずに、恵まれた教育環境でぬくぬくと育った2世、3世の官僚、政治家がいかに多いことか。彼らはそれが当たり前だと思っておりますから、教育にかかる出費の大変さ、教育にかける時間と労力の大きさがわからないのです。

「子どもの教育は親が出しなさい。それが出来ないのは自己責任ですよ」とそんなふうに考えているのではないかと思っています。日本の今の親でそんなにお金を持っている人はもうなかなかいないですよ。お金がかかるから子どもは2人まで、あるいはひょっとしたら1人となります。お金がかかるから子どもを産まないと判断する夫婦も増えるでしょう。それでも日本政府は「もっと子どもを産め」などと言っているわけです。

永田町、霞ヶ関のエリートたちは私たち平民を何と思っているのでしょう。皆さんももっと声をあげて怒らなければいけませんよ。その土地の政治家に言いなさい。何でこの日本は奨学金が少ないのでしょうか。奨学金も1~2万円のレベルです。これさえも、タダであげられない国なのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
日本の底力(2021年5月上旬号)-3

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。