龍馬伝説

by 西 鋭夫 March 24th, 2025

虚像

本当かどうかは分かりませんが、日本人で最初にブーツを履いたのは坂本龍馬だと言われております。長崎にある亀山社中の近くには、ブーツを履いた龍馬像まであります。

彼にはたくさんの伝説がありますが、歴史をしっかりと調べていくとその多くが眉唾物だということに気づきます。例えば、龍馬とお龍さんが結婚して雲仙に行ったそうですが、これを私たちは日本で最初の「新婚旅行」などと言っております。気が狂っているのかと思いました。龍馬の前に2000年の歴史があるのです。その間、どこかの男女が新婚旅行に行っているでしょう。

日本で最初にブーツを履いた、というのも同じような感じです。そうすると、ジョン万次郎などはどうするのですか。アメリカに10年住み、日本に帰ってきて大活躍しますが、あの男は最初からブーツでしょう。他にもたくさんの日本人が龍馬以前にブーツを履いています。

 

亀山社中

現実的に考えても彼がブーツを履いていたのかどうか、定かではありません。私は実際に亀山社中に行きましたが、山の中腹にある一軒家まで行くのに、急勾配の道を行く必要がありました。幅は1メートル50センチぐらいの道です。当時は今のように舗装などしていないでしょう。雨がよく降るのでぬかるみます。そんなところをブーツで歩けるのでしょうか。

あそこに一軒家を造ったのは、そもそも龍馬の存在を隠すためです。いると見せかけて、いないのです。龍馬があそこにいるとしたら、幕府が襲撃に来ますよね。その時、龍馬に逃げ場所はあるのか。裏山は密林、下も密林、狭い道が一本あるだけです。襲ってこられたら逃げ場がありません。だから最初からあの場所は目くらましなのです。龍馬はそこに通ってなどいないのです。

 

再評価の可能性

そんなことばかりやらされて、私は龍馬がかわいそうだと思っています。龍馬には「なんでも初めて」伝説など、必要ないのです。それほどの男です。私は彼を高く評価しております。

日本で最初にブーツを履いたなどと、あんなものはどうでもいいのです。長崎の記念館に行くと、真ちゅうで造った龍馬のブーツが見本で置いてあるわけです。そんなことをするから私のような男は「おい、龍馬の話をもう創るな。竜馬がかわいそうだろう。そのくらいのレヴェルで評価されるのか」と思ってしまうのです。

実際のところ、龍馬はグラバーにブーツをもらったのでしょう。しかし彼はそんなもの履けなかったと思います。彼は「隠密」で行動しているからです。龍馬がブーツを履いて長崎を走るのですか。江戸や京都を走るのですか。私の下駄よりも目立つでしょう。そうしたら隠密行動は大失敗に終わります。龍馬がそんなことをするはずはありません。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
下駄と日本人(2021年10月下旬号)-3

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。