金本位制の終わり
ゴールドは文明が誕生した時から神秘的なものとして扱われてきました。時代が進むと、通貨や紙幣を裏付けるものとしても利用されてきました。しかしゴールドとお金の交換を前提とした経済体制、すなわち金本位制も20世紀後半以降、終焉を迎えます。そのきっかけの一つは世界各国が抱えた大量の借金でした。
信じられないと思いますが、銀行にお金を持っていくと、その分のゴールドと交換してくれたのです。私は日本でもアメリカでも交換したことはありませんが、アメリカでもたとえば100ドルを銀行に持っていくと、100ドル分の純金と交換してくれたのです。
ニクソン・ショック
アメリカはいつそれをやめたのか。1971年のニクソン大統領の時です。俗に「ニクソン・ショック」と呼ばれました。ショックにはもう一つ、中華人民共和国を「中国」を代表する正式な国家として認める、ということもあったのですがここでは割愛します。
ニクソン政権が金本位制を止めた最大の理由は借金です。現在も、アメリカや日本などは借金まみれですが、その額は相当なはずです。つまり、私たちは純金のゴールドと交換し得ないほどの紙幣を発行し、挙句の果てに、回収できないほどの借金を抱えてしまったのです。
金との交換制を止めても、借金は膨れ上がり続けております。そうするとある時に「返せません」が出てきて、暴動が起きます。日本やアメリカではまだ起きていませんが、これは世界中で何回も起きております。キプロス島やギリシャでありましたが、今後はトルコやイタリアでも起きるかもしれません。
仮想通貨
現在ではビットコインに代表されるように仮想通貨が流行っております。私たち人類は有志以来、ゴールドに特別な価値と精神性を認めてきましたが、仮想通貨にも同じ価値があるのでしょうか。仮想通貨は人々を魅了するのでしょうか。
市場ではその価値がバンバンと上がっておりますので、私も最初は買った方が良いのではないかと思いましたが、ハッと気づきました。私はコンピュータ音痴です。メールと文章は書けますけれど、それ以外の部分についてはわからないことがたくさんあるのです。
ビットコインについてもよくわかりませんでした。この仕組みを誰がどうバックアップをするのでしょう。いわゆる担保はあるのでしょうか。ここにあるのは人間の欲望、つまり「これ、上がるから買っておこう」というものだけではないでしょうか。
価格の変動を時々見ておりますが、ビットコインの価値は乱高下しています。この機を狙って、取引の規模はますます大きくなるでしょう。そうすると国が危機感を持ち始めます。すると何が起きるのか。規制とそれに対する抵抗が繰り返され、政情不安な国々では内戦にさえ陥るのではないかと思います。ビットコインの大金持ちは自分の利益を守るためなら、傭兵をどんどんと雇って私兵団を作ることさえ厭わないでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
黄金と日本(2021年3月下旬号)-7
この記事の著者
![西 鋭夫](https://prideandhistory.jp/wp-content/uploads/2022/02/icon_writer1-110x110.png)
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
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1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。