バンク・オブ・イングランド

by 西 鋭夫 January 30th, 2025

金本位体制

大英帝国は世界中の金を山ほど集めまして、金を中心とした世界経済を構想します。金本位体制のスタートです。中心的な役割を担ったのはもちろんイングランド銀行です。金本位体制は当然のことながら世界に大きな影響を与えました。

日本ではちょうど明治維新の頃でしたが、伊藤博文や井上馨ら、長州からイギリスに密留学した長州ファイブと呼ばれる男たちも大きな影響を受けます。実際はイギリスにて「おまえたちは先進国、文明を持った国になりたいのだろう。であれば、金本位にしなければいけない。そうしなければおまえたちは一生、一流の国になれないぞ」と脅された、というのが本当のところでしょう。

圧力をかけたのはイギリスだけではありません。アメリカも金本位体制に移っていますから、日本は米英に挟まれて「俺たちの仲間入りをしたいのだったら、銀など早くやめて金にしなさい」とやられました。

金本位制への移行

日本はいつから「金」に価値を見出したのでしょうか。金はもちろん戦国時代からありましたが、それが本格的に流通し始めたのは徳川幕府の時代からです。しかしながら、その量は銀と比べるとまだまだ希少でした。

それから金本位体制に変わるまでにはさらなる年月を必要としました。明治維新は1868年ですが、日本が銀を使うことをやめて金本位制にしたのはそれから38年後の1894年です。

1894年といえば日清戦争が始まった年です。あの戦争は6ヶ月も戦っていません。遼東半島で少しガチャガチャと清国の軍隊と戦ったくらいです。すでにアヘン漬けになっていた清国に比べ、日本は張り切っていますから戦意が違います。清国を打ち破りました。

 

賠償金

勝った日本は当然のことながら「賠償金を出せ」となります。その額は純銀で2億テールでした。テールというのは量です。それは8,000トンほどの純銀ということになります。清国はその銀で払うと言いました。

伊藤博文なぞは大喜びで「その銀をロンドンに持っていって、ロンドンの英国銀行で銀を金にしてもらえ。そして日本に払え」と言いました。もちろんその通りにしました。

しかしそれは、英国からすれば美味すぎてヨダレが出る話です。手数料は入りますし、金に換えた銀の塊をイングランド銀行においておけるからです。これは見方を変えると日本国の貯金です。ですからロンドンは「東京のお兄ちゃんたちは役に立つぞ。あいつらは俺たちの言うことを聞かないわけにはいかない」と考えました。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
黄金と日本(2021年3月下旬号)-5


 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。