権力者の象徴

by 西 鋭夫 January 16th, 2025

黄金

金はなぜ人を魅了するのでしょうか。それも一瞬ではなく、何千年という非常に長い期間にわたって魅了してきたのです。皆さん、機会があったら金の塊を実際に見て、手に取ってみてください。私は50歳ぐらいになって初めて見ましたが、「うわぁ、金というのはこんなにきれいなのか」と、見惚れてしまいました。

なぜ見惚れてしまうのか。すでに魅了されているのです。私たちにはその理由が分からないのですが、黄金の輝きに誰もが見入ってしまうのです。

その重たさにも驚きました。例えば、500グラムというのはちょうど親指ぐらいで、厚さはもっと薄いのですが、その小さなものがどっしりと重たいのです。とても小さな金の塊で1キロです。すごいことだと思います。

 

象徴

金は鉄のようにあちこちにはありません。その希少性と輝きゆえに、金はその地域や国の最高権力者を象徴するものでもありました。王室や王様、女王様、皇帝などです。彼らは黄金に囲まれておりましたし、着ているものや身につけているものにも金が使われておりました。エジプトのツタンカーメンのマスクはほぼ純金です。金が十分でなかったら金のメッキをかけておりました。

古今東西関係なく、人が住んでいるところで「一番」を表すもの、あるいは「最上級」を表すものは金だったのです。それは今もほとんど変わっておりません。日本では豊臣秀吉の茶室が有名です。黄金の茶室を作りました。そんなことをする秀吉は卑しいのか。違います。秀吉はそれが美しいから作ったのです。

その美しい金に、実用的な意味を持たせたのがお金です。日本で最上の大判は、とても薄いものですが、大きくほぼ純金です。これは将軍や大名、そして一部の豪商が所有していたものであり、庶民がこれを手にすることはほとんどありませんでした。

翡翠

ただし、例外もあります。古代中国における翡翠(ひすい)です。中国で翡翠は金よりもランクが上でした。その理由は、翡翠が人間の将来や運命を映し出すものと思われていたからです。金銀は中国でももちろん高く評価されておりましたが、翡翠はさらに美しく、その意味からも重宝されておりました。

三種の神器の一つに勾玉(まがたま)がありますが、それは翡翠でできております。中国と日本は当時、国境などなく自由に行き来しておりました。近い関係でしたが、喧嘩をしているわけではありませんでした。こんな感じです。行ったり来たり、別にけんかをしている訳ではありませんでした。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
黄金と日本(2021年3月下旬号)-1

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。