原爆
アメリカが求めたもう一つのデータは原爆についてのものです。広島、長崎への投下後、その地で何が起きたのか。放射線はどのように広がったのか。そしてそれはどのような被害をもたらしたのかなど、アメリカにとってそれらはまさに貴重な「データ」でした。
この点でGHQが注目した映像資料がありました。広島に原爆が落ちた後に撮影された何百時間もある動画です。日本人が自分たちで撮影したものです。彼らは記録映画のようなものを製作しました。当然のことながら、GHQが見逃すはずがありません。「おい、それをこちらに出しなさい」と、没収しました。
ちなみに、これを作った監督ですが、アメリカが撤退した後に原爆に関する映画を改めて製作しました。映画化されていない映像がまだまだたくさんあったのです。監督はその映像をずっと隠し持っていたのです。気骨のある映画監督でした。大した男だと思います。
V2ロケット
ヨーロッパでも同じようなことが起きています。ナチスドイツが行っていたロケット技術に関する研究開発です。戦後間もなくの頃ですが、すでに共産党陣営との対立が始まっておりましたから、アメリカは躍起になって研究データの回収に取り組みました。ソ連ももちろん必死でしたから、研究者たちを巡る誘拐合戦のような状況が生じておりました。
ナチスドイツのロケット技術の高さを見てアメリカの研究者たちは驚いたのではないでしょうか。第二次大戦中、どの国もそうした兵器を作る発想もなかったですし、あったとしてもそれを具体的に実現する能力はほとんどなかったからです。
この技術を引き継いだのがアメリカ航空宇宙局、すなわちNASAでした。NASAは61年に世界初の有人宇宙飛行を実現させ、69年に月面着陸に成功しました。ナチスドイツの技術がなかったら月面着陸はさらに遅くなっていたはずです。
科学史
以上のような話はおそらくほとんどの人がご存知ありません。本当のことを何も知らないし、戦争で何が起きていたのか、満州で何をやったか、私たちは知らされていないのです。
近年、戦争に関する様々な本が出ておりまして、その中には「満州に行って当然だった」とか「第二次世界大戦で日本は勝っていたのだ」とか、そんな話がありますが「おい、俺がガキの時には食べ物がなかったのだよ。食べ物がない国が勝てる訳がないだろう」と思います。本当のことを教えていないからいわゆるフィクションが勝手に作られているのです。
皆さん、私たちの知性が喜ぶのは史実です。本当の歴史を知った時の喜びです。そこには悪いことも恥ずかしいこともたくさんありますが、それを避けて通るからこんな国になってしまったのです。皆さん、目を覚まさなくてはいけません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
731部隊とウィルス研究(2020年9月上旬号)-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。