From: 岡崎 匡史
研究室より
日本国憲法の制約上、「皇室には外交がない」というのが建前となっている。
天皇は「国政に関する機能を有しない」ということが基本だからだ。
しかし、「皇室の国際親善」という形で、天皇皇后両陛下は、世界の国々をご訪問されている。
まさに、日本を象徴するのが「皇室外交」である。
ソフト・パワー
天皇皇后両陛下が外国を訪れることは、日本の価値観や魅力を示す「ソフト・パワー」である。
皇室は、日本外交にとって最大の資産。天皇皇后両陛下の振る舞いが、訪問国の間によいイメージを与え、国と国の友好的な関係を醸成させる。
たとえば、オランダは日本軍による捕虜虐待で反日的な雰囲気であったが、2000(平成12)年、両陛下がオランダを訪れたことで雰囲気は様変わりした。
世界各国の親日国は、天皇陛下が訪れることは大変な名誉と感じている。
昭和天皇と戦争責任
上皇陛下になられた明仁天皇と昭和天皇を比較すると、明仁天皇は、30ヵ国以上もの国々を訪れている。
その一方で、昭和天皇が訪れたのは、1971年の欧州歴訪、1975年のアメリカ訪問。昭和天皇が即位なされてからの外国訪問は、2回しかない。
昭和天皇が海外に出向かれると、戦争責任の声が上がる。第二次世界大戦の苦い記憶がアジアだけでなく、ヨーロッパ諸国やアメリカにも残っていた。だから、昭和天皇が海外に出向く機会が少なかった。
そのため、皇太子殿下(平成天皇)が昭和天皇の代役をこなしていた。皇太子時代に、昭和天皇の名代として37ヵ国を訪れている。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
佐藤考一『皇室外交とアジア』(平凡社、2007年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。