731部隊と東京裁判

by 西 鋭夫 December 30th, 2024

なぜ裁かれなかったのか

ナチス・ドイツはニュルンベルク裁判にて裁かれました。医師たちに注目しますと、ユダヤ人に対する虐殺、人体実験を行ったとして、20名の医師が起訴されています。そのうち7人が絞首刑、5人が終身刑、2人が禁固20年というように、重い刑罰が課されております。

その一方で、東京裁判では731部隊の犯罪は問われておりません。なぜでしょうか。ここにはある「取引」があったとみて良いでしょう。アメリカ軍にとって731部隊の研究結果は、喉から手が出るほど欲しかったのです。そうでなければ、あんな残酷なことをしたのにアメリカが許す訳がないのです。

驚愕の事実

アメリカでは生体実験などできなかったわけです。だからその情報と研究結果が欲しかった。しかし731部隊について調べていくと、どんどんと驚愕の事実がわかってきました。それはいわば731部隊のレベルの高さとでも言えるものです。当時のアメリカでは考えもしなかったような方法やその技術でもって研究が進められていたのです。格が違い過ぎたのです。すなわちアメリカは実験を「やらなかった」というのではなく、そのレベルにまで達していなかったのです。

そんなことがありましたから、アメリカは731部隊の罪を問わず、その研究結果を少しでも多く聞き出すことに専念したのです。

アメリカにとって利用価値のある者たちは東京裁判で裁かれておりませんし、重要な情報を持っている者たちは罪から逃れることができたわけです。

 

取引

アメリカにとって利用価値のある人間とは、アメリカの国益に資する人間ということになります。そう判断されれば、アメリカは「ナチス」だろうが「ジャップ」だろうが生かしておいて、情報すべてを取り出しました。そして殺しませんでした。アメリカとの取引とはそういう約束でした。一方のソ連は何か情報を引き出した後は全て殺しています。そのことを石井四郎たちは知っていたのでしょう。

一方、東京帝国大学や京都帝国大学の医学部出身のいわゆる優秀なお医者さんたちの多くが戦後に改心しております。こんなものに手を出していたのかと、戦争に負けた途端にハッと正気に戻ったのです。それで自分が怖くなってしまって、「もう許してもらえるのだったら何でもします、情報を何でもお渡しします」と渡したのです。渡さなければこんなに簡単に許してもらえません。

以上のような話は日本政府にとっては都合が悪いものなので、学校では教えません。歴史の真実を教えないのです。これが日本の歴史教育のあり方です。これらをきちんと教えてもらったら、単に「悪い」ではなく、「ああ、これは大切な国の歩みの一つなのだな」と感じるものです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
731部隊とウィルス研究(2020年9月上旬号)-5

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。