情報大戦略

by 西 鋭夫 December 12th, 2024

演説の天才

ヒトラーは一般大衆をバカにしておりましたが、真理をついておりました。すなわち、ドイツ国民のうちなる思いを本能的に理解し、そこにダイレクトに訴えることができたのです。

第一次世界大戦で負けたドイツはひどい目に遭わされました。それは想像を絶するものでした。これまで築いてきたものをほとんど全て取り上げられ、払いきれないような賠償金を背負わされたのです。払えないのが分かっていて、多額の賠償金を課したのです。誇り高きドイツ国民は怒り狂いました。

追い討ちをかけるようにインフレが起き、食べ物が不足しました。第一次世界大戦のそれぞれの戦場からは負傷した兵士がゾロゾロと帰ってきました。その中にヒトラーもおりました。

 

ドイツ社会の運命

将来のドイツを憂いたヒトラーは、そこである左翼団体に入り、運命の瞬間を迎えます。ある会合にて、急遽演説することとなったのです。演説するはずの幹部の代役でした。会合は50~60人規模のものでした。

当時のヒトラーはボロボロの服を着たみすぼらしい男でしたが、演説するや否や人が変わったように素晴らしいスピーチを行いました。そこにいた若いお兄ちゃんたちもお年寄りも大興奮です。そこからヒトラーは頭角を現していきます。

これがヒトラー率いるナチ党、すなわち悲劇の始まりです。演説するはずの幹部が風邪など引かず、普通に会合に出席していたらその後の将来はひょっとすると違っていたのかもしれません。

 

中国

ナチスドイツの戦略を含め、あらゆるプロパガンダ、洗脳作戦を徹底的に研究、分析したのが現在の中国です。それは穏やかに、気づかれないような形で進められております。

中国共産党はハリウッドやマスコミまでをも牛耳ろうとし、巧妙な形でプロパガンダ作戦を遂行してきました。中国の資金がハリウッドを通して、大統領選挙にまで流れていると言われております。

では、なぜそこまでやるのか。先述のように、中国共産党の上層部は相当程度に歴史を研究していると思います。とりわけ、共産党による独裁、あるいは社会主義は世界の歴史から見て100年以上、続いたところはないのです。それを知っていますから、彼らは今後も巧妙にかつ大胆な情報作戦を実行してくると思います。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
ハリウッドとプロパガンダ(2020年7月上旬号)- 7

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。