ハリウッドは休業中
新型コロナウイルスの影響で、映画館へ足を運ぶ人の数が激減しております。予定されていた映画の公開は延期となり、映画の収録予定も大幅な変更を余儀なくされております。コロナははたして映画業界にどれほどの影響を与えているのでしょうか。
世界恐慌以来、最悪の失業率を記録しておりますアメリカですが、ハリウッドも例外ではありません。休業状態が続いております。皆さん、ハリウッドというのは想像以上に小さい所です。有名人がたくさん集まってきて、素晴らしい監督や俳優、女優さんたちがおられますが、コロナのためにその流れがガチャンと止まってしまいました。
しかしこれはあくまで表面的な話であり、ハリウッドの現状はより深刻です。この15〜16年、ハリウッドの血液はチャイナ・マネーでした。中国資本がないと、ハリウッドが行き詰まってしまうのです。そんな中で、中国発のコロナが米国にやってきた。これは大問題です。
中国人俳優の活躍
私は映画が大好きなので観に行くのですが、最近、映画のストーリー上、何の関係もない所に突如として中国人が登場するシーンをみかけます。あれは誰でしょう。お金を出している会社のご子孫でしょうか。そんなシーンを見るたびに「あれ、これは中国がお金を出したのかな」と思いました。案の定、膨大に出していることがわかってきました。
そのお金が止まったのです。損害はどれほどのものか。まだ十分にわかっていませんが、失業者の数は数万人を超えております。わずか3ヶ月から4ヶ月の間で、2兆円から4兆円の損失と言われております。
ハリウッドだけではありません。アメリカの映画産業はディズニーもひっくるめて中国のお金が入ってきております。その狙いは明確です。映画をいわゆる広告代理店のように用いて、文句を言わせないようにしているのです。そんな状況がこの数年ほど続いておりましたが、コロナによってピタッと止まりました。
中国の思惑
見方を変えれば、中国とハリウッドの蜜月関係がコロナにより明らかになったと言えるでしょう。中国はハリウッドの持つ影響力に夢中になり、ハリウッドを手懐け、中国が思い描く映画を作ろうと考えておりました。ハリウッド側もジャンジャンとお金を使ってスケールの大きな映画を作りたいと考えていますから、チャイナ・マネーは魅力でした。
歴史を遡ると、ハリウッドに手を出したのは中国だけではありません。バブル時代、日本もハリウッドに手を出しました。しかし失敗しました。日本人は人を信じますが、ハリウッドの世界はニコニコしながらお友達の背中をグサリと刺す世界です。裏切られる方がバカだとそう考える社会です。そのため、ハリウッドに手を出した日本企業は相当な痛手を負いました。
中国は共産主義で、独裁的で、国民の自由を強力に制限しているわけです。その大敵は「自由」や「民主主義」の価値を世界中に広めようとするアメリカです。その影響を抑えないといけないのです。だからこそハリウッドを攻め落とし、コントロールしようと考えたのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ハリウッドとプロパガンダ(2020年7月上旬号)- 1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。