軍産複合体
アイゼンハワー大統領が退任演説でお話しされた「軍産複合体」ですが、これは今もなお国際政治のあり方にとても大きな影響を与えております。人によっては聞きなれない言葉かもしれませんが、関係者にとっては敏感にならざるを得ない言葉です。
皆さん、日本で武器を造っている会社とアメリカで武器を造っている会社、それから軍隊はもうべったりの関係です。優れた武器・兵器を作るためには緊密な協力関係が必要なのです。
問題はこの産業が止まることなくどんどんと膨れ上がっていることです。大きくなるということはそこに関わる人も、組織も、お金も、どんどんと増えていくということです。経済規模はすでに何十兆円という状況でしょう。
ではどんな人たちがここに関わっていくのかというと、もちろん一般の人たちも大勢いらっしゃいますが、管理者層は軍隊経験者で提督とか元帥レベルの人たちです。その多くは顧問という形でこの産業体に関わっていきます。
アイゼンハワー大統領
アイゼンハワーさんは第二次大戦にてドイツを負かしたアメリカの陸軍元帥です。彼が大統領になって分かったことは、先の言葉にも表れておりますがアメリカの軍隊と軍事産業が一心同体であるということです。武器を作り続けるのは、戦争があるからです。皆さん、ここをよく覚えておいてください。
武器をたくさん造るということですが、それは何のために作るのでしょうか。敵を打ち負かすためでしょう。「悪いやつがいるではないか。ほら、朝鮮半島で朝鮮戦争になっただろう」と、そんな具合でこの複合体はどんどんと膨れ上がっていったのです。
日本のことも考えてみましょう。皆さん、日本の産業は優秀ですから、良い武器や兵器など造ろうと思えばいくらでも造れます。しかし、なぜかほとんど買わされているのが現状です。例えば戦闘機ですが、 あれに年間、何兆円使っているのですか。本当のことを誰か言ってくれるのですか。誰に買わされているのですか。アメリカです。アメリカからのプレッシャーはめちゃめちゃ強いです。
製造された武器の行方
日本はアメリカの武器を売るいわばマーケットですから「中国は怖いぞ、北朝鮮も怖いぞ。だから買いなさい」とやられるのです。軍産複合体がある限り、私たちは仮想敵国が必要なのです。同じようなことが日本だけでなく、多くの国々で起きております。
戦争が起きなければそこで莫大なお金を使う理由もありません。軍産複合体は潰れてしまいます。ですから「戦争をなくしましょう」とか「平和憲法」と言っていますけれど、皆さん、どこを向いてものを言っているのですか。それはアメリカにこそ言うべき言葉なのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
日米同盟の未来(2020年10月上旬号)- 3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。