SNSの功罪
インターネットやソーシャルネットワークサービス(SNS)が発展した現代では、情報は秒単位で世界中へとあっという間に広まっていきます。活版印刷機の時代では考えられないようなスピードです。しかしそれと同時に、情報ネットワークを利用し、政治的に利用することも可能となりました。「アラブの春」ではSNSが民主化を促したと注目を浴びました。
ネットワークにはさまざまなリスクもあります。知らない組織に乗っ取られる危険性もありますし、テロ集団もSNSを有効活用しております。Fakeニュースの主要な拡散主体もSNSです。このことで大問題が起きております。写真や声のデータを使えば、根も葉もないニュースを作り出すことさえできるのです。
では私たちは、何らかの規制をすべきなのでしょうか。情報を全て検閲すべきなのでしょうか。ここには非常に難しい問題があります。
2016年の選挙
よく言われていることですが、2016年にトランプさんが選挙に勝利された時に何が起きていたのか。勝因の一つはトランプ・サポーターたちがSNSをどんどんと使ったことがあげられます。ものすごい広がりを見せたのです。もしそれがなかったら選挙の行方は分からなかったかもしれません。
実際、FacebookやGoogleがトランプさんが勝ったことでバッシングを受けました。「おまえたちのせいで、俺たちの一番嫌いな極右のトランプが勝ったではないか。どうしてくれるのだ」ということでした。そうはいっても、それはGoogleにとってもFacebookにとっても全く予期せぬ出来事だったのです。
その後になってFacebookやGoogleが検閲を開始します。Twitterも時々やっております。その結果、今度は何が起きたでしょうか。トランプ寄りの発言が検閲され、除かれてしまうことになったのです。
「報道の自由」の価値
しかし米国社会において「報道の自由」は極めて重要です。これは日本では想像も出来ないほど強いものです。規制云々よりもまず、報道の自由を絶対に守ろうとします。報道の自由は民主主義の重要な基盤の一つです。「トランプ・サポーターはダメ」「トランプ万歳と言ったら絶対ダメ」という意見も、「トランプ万歳」「トランプ・サポーターは素晴らしい」という意見も、米国社会では規制しておりません。
反対に、徹底的に情報を規制している国があります。中国です。中国はAI技術を駆使して国民を管理し、情報を集め、中央集権的にコントロールしているのです。中国政府を批判するような記事やウェブサイト、SNSは厳しい検閲を受けております。
これは圧倒的な言論統制です。統制だけではなく、下手なことを言うと行方不明になります。これと同じことがソ連では起きておりました。スターリンは情報統制のため、3000万人ほど殺したと言われております。
西鋭夫のフーヴァーレポート
人脈と政治力(2020年6月下旬号)- 8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。