人脈社会の掟

by 西 鋭夫 September 19th, 2024

勘違い

私たちの生活においても人脈は大切です。重要な人物を知っているか否かで、大きな差がつくこともあります。しかしここには決して犯してはいけない掟があります。それは、その人を知っているからといって、むやみに名前を出してはいけないということです。

私たちは誰か偉い人の名前を出すと、急に自分も偉くなったかのような気になりますが、それは幻想です。ましてや名刺を交換しただけで、知り合いかのように振る舞う人もおりますが、それは全くもって上辺だけの話であり、長い目で見れば自分が痛い目にあう可能性もあります。

私たちのような、いわゆる学術的なお仕事をしている人は、その分野の権威や大物政治家に会うことがありますが、絶対にその人の名前を出してはいけません。そんなことをしたら、会った政治家も困るでしょう。「何で西なんかと話をしているのだ」と、周りから言われます。そんな状態になったら、今度は私が二度とその人のところにいってお話しさせてもらえないでしょう。だから、西は何もしゃべらないし、会ったことも言わない、というような状態を作っておかないといけないのです。

偉い先生の名前を挙げて、色々とお話しされる人もいらっしゃいますが、それも最悪です。そんなふうに言われているなど、当の本人は思っていないでしょう。また、そんな自慢をされる方は、偉い政治家に会うと自分にはくが付いたように感じるわけですが、これは相当趣味が悪いと思います。

 

紹介

人脈を広げる際の重要な手段は「紹介」です。人を知人に紹介したり、紹介されたりする場合がありますが、ここで一番気をつけないといけないことは「裏切り」と「不正な金儲け」です。

過去にこの二つのいずれかを経験している人物は要注意です。「紹介」に関わる行為は一切しない方が良いと思います。一度裏切った人は必ずもう1回裏切ります。自分の友達を裏切った人は、戦国時代は必ず打ち首になりました。自分の子分で裏切った人も必ず打ち首です。切腹なんかもったいない、打ち首です。

カルロス・ゴーンさんがいい例でしょう。20年間かけて、危篤状態の日産を世界一の会社にしました。やり方は厳しいです。しかし、日本人の皆さんは「ゴーンが厳しかった」と言う前に、なぜ自分で厳しくできなかったのでしょうか。

蘇った日産に助けられ、生き延びた人たちも大勢いらっしゃいますが、今度は彼らがゴーンさんを目の敵にしてゴーン叩きを始めました。恩を忘れて、今度は自分たちがトップになろうとして、ゴーンさんの足を引っ張っている訳です。これは彼にとっては大いなる裏切りです。ゴーンさんはこれを絶対忘れないと思います。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
人脈と政治力(2020年6月下旬号)- 4

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。