人脈
人生は人との出会いによって大きく左右されます。日本には縁結びの神様もいらっしゃるでしょう。恋愛関係だけではありません。人や事物とのあらゆる出会い、すなわち「縁」を司る神様です。
諺(ことわざ)にも、縁の大切さを説くものがあります。「小才(小さな才能の人物)は、縁に出会いて縁に気付かず。中才(中ぐらいの才能の人物)は、縁に気付いて縁を生かさず。大才(大きな人物)は、袖すり合うだけの縁をも生かす」です。
では、人脈によるネットワークは、私たちの日常にとって、さらには実社会における政治や経済においてどれだけの影響を与えているのでしょうか。
コネ
私は日本で大学生をしていた頃、人脈あるいはコネについて色々なお話を聞いてきましたが、私自身は正直なところほとんど意味のないものだと思っていました。「人脈とかコネなんてものはいらないよ。自分の力でどうにでもなる」と考えていたのです。
これは大間違いでした。確かに、最後の最後は「自分の力」が重要ですし、それで何とかなるのですけれど、やはりそれを助けてくれるおじさんとかおばさんとか、さらには結婚した妻の家と、またその家の持つコネが私を助けてくれていることに気づきました。
はっきり言っておきますが、世の中でコネほど大切なものはありません。人脈ほど重要なものはありません。自分だけでできると思っていたら痛い目に遭います。自分のコネ、人脈を大切に維持して、育てたらよろしい。
学閥
コネの中には様々なものがあります。学閥はその一つの代表例です。日本の歴史を眺めてみると、この学閥がいかに重要だったかが分かります。近現代の歴史を見てください。例えば、太平洋戦争の時の司令官たちは、陸軍士官学校や海軍士官学校を1番、2番で卒業した人たちです。田舎生まれであっても関係ありません。成績抜群で卒業した学生はどんどんと出世していきます。
大本営で作戦作りを行っていた作戦課というのがありますが、そこに配属される人たちはいわゆる陸軍、海軍の秀才たちでした。そして、そこでまた色々な人付き合いが始まり、そこでの親分さんたちや、政府のお偉いさんたちとベッタリになっていきます。
結婚もコネの中で決まっていきます。エリート同士で紹介し合い、婚姻関係が成立していく。そしてまたその子どもたちが、お父さんやお母さん、親戚のおじちゃん、おばちゃんたちがそうしてきたように、良い学校に入って、良い成績で卒業するのです。そしてまた新たな人脈を築いていくのです。
ですから皆さん、コネや人脈は決して馬鹿にしてはいけません。これは歴史的に脈々と続いている非常に大きな力なのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
人脈と政治力(2020年6月下旬号)- 1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。