踏み躙られた絆
霞ヶ関の官僚や永田町の先生方は、庶民の暮らしをしたことがあるのでしょうか。民間企業などで働いた経験はあるのでしょうか。人々を「管理」するばかりで、お金のために働いたことがあるのでしょうか。
私はリーマンショックの際に日系ブラジル人らに行った「仕打ち」とでも呼べる対応に激昂しております。解雇して、母国に帰るのだったら30万円を出し、実際に支援を受けて帰国した人には条件付きで入国を認めないとしました。この30万円も、どっさりのペーパーを提出させました。どれだけの人がうんざりし、疲弊したでしょうか。労働環境や条件によって10万円となった人もおります。条件付きで入国を認めません、としていた人たちについても、少し時間が過ぎた後に、状況が変わりましたので一部については再入国を認めます、としました。
完全にバカにしております。自分たちの都合の良いように日系人を扱っているのです。一時期は「絆」と呼び、今度は都合上の「労働力」とみているのです。彼らは人間なのですよ。この感覚が、こんな対応策を考える先生たちにはわからないのでしょう。肌感覚で庶民の暮らしを知らないのです。
コロナ蔓延の中で
皆さん、状況が大きく異なりますので、想像し難いでしょうが、今現在、リーマンショックの時と似たことが起きていますよ。
私たち人間はそれぞれ違うのです。法の前では平等ですが、法の後ろでは全部、違います。法だけでは人も地域も社会も治めきれません。だから1人1人の努力や、そこで結果を出した人たちをしっかりと評価しないといけません。遊んで暮らしている人と同じにしてはダメです。
今、コロナが流行り始めています。「店を閉めた」という食堂もレストランも、商店もたくさんあるでしょう。地方の都市では強烈なシャッター街がさらに拡大しています。どこを見回しても不景気ばかりです。失業者が溢れ、学校もどうしていいか分からない。
自由がなくなっております。そしてどこも規制だけです。パチンコ屋はつるし上げです。パチンコぐらいやらせてやりなさい。パチンコがダメだったら、もうすべてダメでしょう。ではなぜ、スーパーは開いているのですか。3密を避けよ、と言いますが、スーパーは3密状態です。それを許しながら、パチンコ屋さんだけが悪者扱いされて叩かれております。
規制大国
大阪の知事が「俺たちは俺たちでやる」と言ったらどんなことが起きたでしょうか。永田町は怒り狂っています。永田町の先生方は何を考えているのですか。あなたたちは神様なのですか。いつお殿様になったのでしょうか。選挙中は頭を下げていますが、選ばれるともうどうでもいいのでしょうか。
あたかも規制が楽しくてしょうがないように見えます。管理する側に立つのは楽しいのでしょうか。本人がそんな意識ではなくとも、庶民の暮らしから眺めると、そう見えるのです。地方それぞれに任せたら良いのに、それさえもさせない。
戦前の特別高等警察の講義でたくさんお話しいたしましたが、当時の日本で私たちはどれだけコントロールされてきたのでしょうか。マスコミもコントロール、もうすべてが「言ってはいけないこと」だらけでした。
政府は、店を開けたままのパチンコ屋さんの店長を逮捕して牢屋に入れたいのでしょう。そうなったら皆さん、喜んではダメですよ。次はあなたの番です。
西鋭夫のフーヴァーレポート
日系移民の悲劇(2020年5月上旬号)- 11
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。