初詣と鉄道

by 岡崎匡史 September 1st, 2024



From:岡崎 匡史
研究室より

元日には、多くの人々が初詣に参る。
一年の安全と平安を祈願するためだ。

10万人、さらには100万人以上もの参拝者を集める有名な神社仏閣がある。
東京の明治神宮に至っては、300万人以上もの人々が訪れる。

なぜ、これほど多くの人々が一つの神社に集中するのか。

鉄道旅行と関所の廃止 

初詣で賑わっている社寺は、例外なく鉄道の路線にある。

初詣は「鉄道」が成立することによって、大勢の人々が路線沿いの有名な社寺にお参りに行くようになった。鉄道会社が臨時列車を出して、有名神社への参拝を後押しした。

鉄道が設置される以前は、地元の氏神さまに初詣に参っていた。
しかし、この風習は明治になり、大きく変わっていく。

地元優位から、有名な神社にお参りにいくことがブームになった。

時間意識

明治維新が成し遂げられるまで、人の往来は限られていた。
「関所」があったからだ。

1869(明治2)年に「関所」が廃止され、見ず知らずの土地への旅行が流行る。
とはいうものの、当時の日本人にとって神社仏閣へのお参りが行楽であった。

鉄道の開業で、日本人の時間意識も変化した。
江戸時代の日本では、地域によって時間が異なっていた。
だが、電車を規則正しく動かすためには、全国的な時間の統一が不可欠であった。

時間の最小単位は「小半時」(こはんとき・30分)であったが、「分」を意識せざるを得ない。

時間厳守・時間管理が求められようになったのだ。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・平山昇『初詣の社会史』(東京大学出版会、2015年)
・老川慶喜『日本鉄道史 幕末・明治篇』(中央公論新社、2014年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。