法王の権威
北朝鮮を核・ミサイル問題や拉致問題といった観点からばかりみていると、どうしても視野が狭くなってしまいます。北朝鮮国内の宗教と、それに関連する国際的な動きを注意深くみていくことも時には必要です。
覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、2015年、ローマ法王がキューバを訪問しましたね。これは世界中で大ニュースとなりました。キリスト教徒たちの間ではショックの方が大きかったかもしれません。
しかしその後に何が起きましたか。アメリカとキューバという互いに憎み合う二つの国が正常化を実現したわけです。この背景に、ローマ法王の力があったことは確かでしょう。
宗教という着眼点
今後の北朝鮮にも同じようなことが起こり得る可能性は十分にあります。金日成時代、アメリカで有名な伝道師ビリー・グラハムが2度も北朝鮮を訪れていますね。これがどれだけの影響を持ったかは分かりませんが、おそらく「キリスト教徒を弾圧することだけはやめてください。殺さないでください。殺すことはないと思いますよ。そんな悪い人ではないですよ」と、懇願しに行ったのだと思います。
金日成は、ビリー・グラハムの顔を立てつつも、内心は非常に難しい決断に迫られていたと思います。宗教というのは人の心の問題でしょう。人々の心の中に、将軍としての自分よりも上の存在である神を想像することを認めるのですから、それは極めて厳しいことだったと思います。
ですから、北朝鮮の宗教政策は大きく変わることはないでしょう。しかし、もしこの部分で何らかの揺らぎや変化が見て取れるのなら、それは決して小さなものではなく、何か大きな変動へとつながる動きだと思っています。
トランプ政権の行方
私はコロナが来るまでは、次の選挙もトランプ氏の圧勝だと思っていました。民主党のバイデンさんとサンダースさんはもうトランプのランクではありませんので、完全に勝つと思っていました。しかし、コロナが入ってきたのです。
これにより、何か地殻変動が起きたように感じています。世界の政治と経済の基軸が変わったように思うのです。世界中で大恐慌が起こる可能性があります。日本で爆買い、アメリカでも爆買い現象が起きていますが、コロナはそこではなくて、もっと深い所で私たち人類に恐怖を植え込んでいるように思うのです。そのために、信じられるものは自分たちだけだ、という意識が過剰になっているようにも感じられます。
トランプさんがやろうとしていたことも、大きな歯止めがかかっております。彼は北朝鮮問題を本気で解決しようとしたのでしょう。しかし、その動きも止まってしまいました。中国に対する脅威論も再燃しております。疑いの目がかけられております。もはやビジネスを競う相手ではなくなってしまいました。
西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)- 8
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。