禁じ手
トランプ大統領の頭の中には、アメリカの同盟国である韓国と日本に、核兵器の保有を許すという選択の余地は残っているのでしょうか。皆さんはどう考えますか。
私は残っていると思います。トランプさんのことですから、韓国が核を持ち、日本が核を持つと、これでバランスが取れたと思うでしょう。そうなれば、北朝鮮はそれほど怖くないし、これで中国もあまり口を出さなくなります。日本が仮に「核を持ちたいのですけれど」とトランプさんに言ったら、表面的にはOKはしないけれど「いいのではないか。やはり自分の国だから自分で守った方がいいのではないのかな」という、そんな感じでしょう。
日本が独自に「核兵器をつくる」ということも、もちろんオプションとしてはあると思いますが、その前にトランプ大統領はアメリカの核を日本に買わせようとするのではないか、とも考えます。アメリカには現在、2万発もの核があり、有り余っている状態です。水爆も含め、最新のものはもちろん米国に残し、古くなったものを卸すということをするのではないか、と思います。
皆さん、彼は大のビジネスマンです。米国で大成功を収めた男ですから、商売は上手です。そんな彼は、武器商売が一番儲かることを誰よりも知っているのでしょう。武器の話をする時に絶えず防衛や攻撃など言っていますけれど、皆さん、お金のことを考えなければいけませんよ。
同床異夢
しかし悩みごともあります。それは、日本、アメリカ、韓国の3カ国間の足並みです。北朝鮮は危険な国家であり、平和を乱す国であると共通の認識を持っているにもかかわらず、日米韓の関係はいつもギクシャクしております。なぜか。
まずは韓国も日本も、米国と対等であると思っているかもしれませんが、その大前提が間違っております。アメリカの軍事力や国力は一人勝ちの状態です。日韓も相手になりません。世界的に強すぎる状態なのです。にもかかわらず、韓国や日本は米国と対等であろうとするわけです。例えば、米国が主導的に北朝鮮問題を解決しようとしましょう。そうすると、韓国は「勝手なことをするな」と、異を唱えるのです。主役は自分だと思っているのです。
一方の日本は軍事力をほとんど持っておりません。米国に頼りきりの状態なのです。そんな中で、核を持つ北朝鮮に対し、外交力でなんとかしようとしているわけです。それがいかに非力なことか、米国はよく知っていますから、「独自の外交力を持って頑張ります」と日本が言っても、聞かないでしょう。
日韓両国もいがみ合っております。韓国は最初から日本を悪と見ています。それで機会があったらものを取り上げて、使ってやろうと思っています。日本も最近やっとそれが分かってきて、もう韓国の言うことにあまり注目していない状況です。韓国と日本が本当のお友達になれるのは、どこかで大戦争があって韓国と日本が一緒になって戦った時だけです。その可能性は今のところほとんどないので、このまま仲の悪い関係が続いていくことでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)- 5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。